大阪障害者センター 障害者生活支援システム研究会 障害者運動の歴史

「障害者生活支援システム研究会 日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会」のページです。
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日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会

障害者生活支援システム研究会では、「日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会」を、2007年7月から立上げ、適時その検討・議論を行ってきました。

この部会設置の経過は、2006年「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会」(障全協)が結成40周年を迎えるに当たって、その歴史を研究者とともに整理したいとの申し入れがきっかけとなっています。

しかし運動史の整理に当たっては、一運動団体からだけの視点による整理でよいのかとの問題提起もあり、障全協の団体運動史とは別に、あらためて客観的な日本の障害者運動史をまとめていく作業が必要であるとの問題意識から、部会設置に至ることとなりました。

部会では、「今なぜ運動史が必要なのか」「現在の障害者運動の評価と現状認識」などについての認識を一致させる作業からスタートしました。

この間の問題提起

これまでの議論で提起された問題提起は以下の通りです。

※問題提起1

いわゆる「障害学」との批判的な対話の必要性と重要性。
「権利条約」理解に関して、DPI、ILとの共同や連帯が必要性
これからの運動、実践、研究を行っていく上での課題の今日性
しょうがい、当事者、運動、歴史、権利、差別等の概念整理の重要性。
こうした概念等の到達点と課題の整理を行う。

※問題提起2

障害者運動とは何か(内部からの論点・外部からの論点)
運動の目的・当事者論・運動の手法
障害者をとりまく社会(構造)の変化と障害者運動の変化の相関関係(今後)
これからの障害者運動の課題・可能性と展望(今後)

※問題提起3:障害者のいる家族に関する理論的検討

障害者のいる家族に関する言説(先行研究レビュー)
「脱家族」の主張/日本における主張の特殊性と脱家族における具体的戦略
アマルティア・センによる「well-being」論
今後の取り組みの方向
  • 障害児者を持つ母親の多様性を保証する社会構造、各属性間の相互関係とそれに基づく自己認識・子どもの障害受容:実証研究としての調査検討
  • 障害者の親・家族と言う特殊性に関する理論構築
  • 障害者の家族としてのwell-beingが実現された後の家族の人生とは

※問題提起4:「自己決定権」歴史的・理論的検討

自己決定と自己決定権の概念操作
  • 自己決定と自己決定権の定義
  • 自己決定権の射程
  • 社会福祉における自己決定権の位置づけ
  • 障害学における「自己決定権」の位置づけ
  • 自立と自己決定権
今後の展開
  • 自由権と自己決定
  • 自己決定の両義性
  • 自己決定における「共同性」について

※問題提起5

1970年代以降の非営利福祉協同組織の動向と課題
  • 福祉事業運動への注目
  • 福祉協同運動の位置「福祉国家の変容」への対抗として
  • イタリア社会的協同組合の生成・展開とその現代的意義
  • わが国の共同作業所運動の生成と展開
  • 福祉協同組織の意義-福祉と福祉行政の根本的転換を提起

※問題提起6

「日本における戦後の障害者運動の展開と到達点」

※問題提起7

障害者雇用促進における割当雇用制度の見当
  • 障害者雇用促進法の基本的性格
  • 身体障害者雇用促進法の制定
  • 行政指導等による雇用率達成と雇用率の改善
  • 現行割当雇用制度の確立と以降の部分修正
  • まとめ

※問題提起8

所得保障の歴史
  • 無年金障害者とは
  • 無年金障害者問題とは
  • 無年金障害者の推計数と根拠
  • 「無年金障害者の会」の基本的な要求から
  • 「特別障害給付金法」の改正に向けて
  • 障害基礎年金の改正に向けて
  • 稼得能力と障害年金

※問題提起9:歴年の障害者(児)を守る全大阪連絡協議会の要求内容の変遷について

運動史分析をめぐる困難

こうした多様な側面から、障害者運動史についての検討を進める中で、分析の視点についても十分なコンセンサスが取れている状況にはないことが明らかとなりました。さらに、運動史の分析に当たっては、次のような困難が指摘されてきました。

  1. 日本の障害者運動、運動体の歴史については、その時代の他の運動(労働運動等)や社会状況の影響が大きく反映していることから、単にひとつの団体の歴史だけを見ているだけでは不十分であること。
  2. 歴史的な運動の核となる様々な思想の受けとめと、運動の手法や実践ごとに特徴があり、これを総括的に分析していくための整理手法が明確になっていないこと。
  3. 過去の資料が分散しており、総合的に歴史分析を行っていくための資料入手が困難なこと。
  4. 障害者運動の領域が極めて多岐にわたっており、領域ごとの歴史などの複雑な背景が存在していること。
  5. 個別課題ごとの歴史分析の視点と全体を網羅する分析視点との融合が困難であること。
  6. 貧困状況などを測るための障害者のくらしに係る基礎調査の資料が分散していること。これらの資料の再集約とともに生活問題などの視点から、再整理することが必要。
  7. 一方で、現在の障害者運動の課題を把握する上からも、歴史的視点が重要であるにもかかわらず、運動の担い手の世代交代などもあって、課題や問題意識の共有化が困難となっている。こうした状況を改善していく上からも歴史的視点の継承の必要性は高い。
  8. このように歴史研究には困難を伴うものの、障害者運動に係る歴史認識を共有する言葉重要な課題である。そこには資料収集などの困難とともに、日本が犯した侵略戦争への対応など、戦後史だけでまとめられるのかについても検討も必要もあること。

今後の取り組み

こうした状況を踏まえ、今後以下のような取り組みを行っていくこととなりました。

  • 大阪障害者センターホームページに「障害者生活支援システム研究会 日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会」のページを開設し、部会設置の経過とともに、この間研究会が取りまとめた障害者運動に係る年表を公表する。
  • 寄稿ページを併設し、これまでの研究会における報告者からの寄稿(紀要等への掲載論文の転載を含む)を掲載していく。
  • 大学院生や研究者からの寄稿依頼を広く受付ける。(ホームページへの掲載は部会での承認を必要とする)
  • 将来寄稿論文等の集約状況を勘案しながら書籍化についても検討する。

障害者運動史年表の公表について

この年表はこれまでの様々な団体や個人が整理された年表を、当センター部会の責任で再整理させていただいたものです。

(1) 参考とさせていただいた年表・資料等

  • 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の整理年表
  • 日本労働年鑑(法政大学大原社会問題研究所)
  • 障害者(運動)史のための年表(http://www.arsvi.com/d/d00h.htm
  • 『戦前戦後障害者運動史年表――戦前戦後障害者運動と関係法制』(著者 杉本章 2008年12月25日発行 現代書館)
  • 「戦後障害者運動史年表」(全国自立生活センター協議会 編 20010501 現代書館)
  • 青い芝の会・歴史(結成から横塚晃一死去まで)(作成:立岩真也 + 定藤邦子)
  • 障害者福祉の世界(佐藤久夫 小沢温 有斐閣 2000年)
  • 障害者福祉原論(植田・岡村・結城 高菅出版2001年)
  • 障害者雇用制度の確立をめざして(児島美津子編:1982 法律文化社)
  • 社会福祉の利用者負担を考える(小川政亮編:1993 ミネルバ書房)
  • 知的障害者の恋愛と性に光を(障害者の生と性の研究会:1996 かもがわ出版)
  • 障害者の機会平等と自立生活(北野誠一等編:1999 明石書店)
  • 自立生活運動と障害文化(JIL編:2001 現代書館)
  • ノーマライゼーションと日本の脱施設化(鈴木・塩見:2003 かもがわ出版)
  • 当事者主権(中西・上野著:2003 岩波新書)
  • 知的障害者関係戦後史年表((NPO)エンパワメント・プランニング協会)
  • 障害者雇用促進法の歴史(立命館院生 モハメド氏提供)
  • 社会保障裁判年表(愛媛大 鈴木静氏提供)
  • 「ひとりごとのつまったかみぶくろ」(http://www.max.hi-ho.ne.jp/nvcc/SF0.HTM)資料集
  • その他インターネット検索による情報参照
    • 障害者団体
      日本身体障害者団体連絡会(日身連)、日本肢体不自由児協会・全日本手をつなぐ育成会・知的障害福祉協会・大阪府精神障害者家族会連会・全日本ろうあ連盟・全国障害者ととも兄弟姉妹の会・重症心身障害児者を守る会・全国自立生活センター協議会・DPI日本会議・日本リハビリテーション学会・ゼンコロ・日本自閉症協会・日本障害者協議会・日本障害フォーラム・等
    • 個人
      糸賀一雄・池田太郎・田村一二・岡崎英彦・田中昌人・牧口一二・上田敏・小山内美智子・中西正司・立岩真也・定藤丈弘・加東田博・福島智・長瀬修・石井哲夫・江草安彦・佐々木正美・北野誠一・花田春兆・竹中ナミ・楠敏雄・三田優子・等

(2) 年表活用上の留意点

  1. この年表を使用する際には、大阪障害者センター日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会の事前承認を得てください。
    許可に際して、使用される方に対して以下のことを求めます。
    1. 使用時は部会への連絡を行う。
    2. 論文などへの使用の際は出典を記載する。
  2. この年表は、不完全であることを前提として、補足・修正などの意見が反映できるよう、メールで意見の内容を吟味しながら修正を行っていく。
  3. 使用許可・修正等のご意見の送付先
    特定非営利活動法人大阪障害者センター日本の障害者運動の歴史的分析に関する検討部会
    GSP22335@nifty.com