大阪障害者センター 壁ニュース

強制不妊手術訴訟、大阪でも提訴

「壁ニュース」テキスト版 2018/12/14

 旧優生保護法に基づく、強制不妊手術の違憲性を問う訴訟は、2018年1月に宮城県の佐藤由美さん(仮名、60代)が、15歳のときに知的障害を理由に優生手術を受けさせられたことに対し、国に謝罪と補償を求めて提訴したことがきっかけで、その後、札幌・東京・熊本等、全国に広がり、兵庫での聴覚障害者の訴訟等関西でも、その運動が広まってきました。
 こんな中、大阪でも、関西在住の女性(75)が国に約3千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が12日、大阪地裁(大須賀寛之裁判長)で開かれ、当初出廷を予定していなかった被害者の女性も出廷し「元の体に戻してほしい」と訴えました。国側は請求棄却を求め、争う姿勢を示しています。
 これらの問題に対しては、全国弁護団の結成等、全国での訴訟が進む中、超党派の議員連盟や自・公の与党ワーキングチームが結成され、それぞれ12/10の会合で、両者の協議で一本化した救済法案の全体像を了承しています。与野党は一本化した法案を来年の通常国会に提出する予定で、会期内に成立する見通しと言われています。この案では、国の責任を追及する訴訟に対し、「(被害者が)心身に多大な苦痛を受けたことに対し、われわれは真摯に反省し、心から深くおわびする」として、一時金を支給するといった内容となっています。
 ただ、この救済法案を巡っていは、「(謝罪の)主体が明確化されず不十分」などと再検討を求めるコメントを発表した弁護団ともまだ隔たりがありますが、こうした動きそのものは評価を行っています。
 また、被害者・家族の会は、12/4結成され、「国は誤った政策を認めて謝罪した上で、被害者が納得できる補償と人権回復を望むとともに、多くの被害者に勇気を出して名乗り出てほしい」と訴えています。
 同時に、JDFは、8月に、「旧優生保護法による強制不妊手術問題に関する声明~国は被害者に速やかな謝罪と救済を」を発表し、
1.国は、旧優生保護法により強制不妊手術を受けさせられたすべての被害者に対して、その過ちを認め、謝罪すること。また、被害者を対象とした「救済法」を速やかに制定すること。
2.国は、旧優生保護法が憲法違反だったことを認めること。
3.同時に、この問題の重要性に鑑み、旧優生保護法による強制不妊手術にとどまらず、形式上は同意のある不妊手術や妊娠中絶手術についての資料の保全と調査対象の拡大について、地方公共団体及び関係機関に対し指示すること。
4.また、この問題が与える社会的影響を考慮し、「検証委員会」を立ち上げること。それは各界各層の人によって構成し、障害当事者団体も構成メンバーとすること。
等を訴えてきました。
 また、全国手をつなぐ育成会連合会も、内部で過去の取り組みを検証する委員会を設置し、その報告書を受けて、12/10声明を発表しています。
 その中では、過去の対応について以下のように総括しています。
○機関誌『手をつなぐ』の関連記事からは、育成会が強制的不妊手術の実施を助長したことは否定できず、こうした過去があったことは率直に反省し、こうした歴史を繰り返さないために必要な活動や取り組みについて会としても真摯に検討すべき。
○一方で、旧優生保護法の制定に知的障害者の親や家族が積極的に関わったり制定を求めたりしたことは認められず、強制的不妊手術についても当時の優生
思想や産児制限施策のなかで「合法」とされ、社会的支援のない中で、様々な要因も相俟って、障害者本人の意思を無視するかたちで不妊手術に追い立てられたと考えられる。
として、被害者救済に真摯に向き合うことともに、「知的障害者の恋愛・結婚・出産・子育てに関して、その支
援となる福祉サービスの充実を求めていきます。また、特に文部科学省には障害者への性教育の推進を求めるとともに、現在取り組みが進められている障害者の生涯学習の一環として性について学ぶ機会の創出を後押しするよう求めます。」としています。 
 12/12、きょうされん大阪支部・障埼連・日本障害者センター・社会福祉施設経営者同友会 共催の「第2回報酬改定学習シンポが、大阪と埼玉の2つの会場をスカイプで結び開催されました。
 このシンポでは、以下のような報告がありました。
◆第1部 問題提起
峰島 厚氏(日本障害者センター 理事長)
◆第2部 各分野からの報告
①高齢介護
正森 克也氏(21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会 事務局長)
②障 害
萩原 政行氏(埼玉 社会福祉法人日和田会 「かわせみ」施設長)
③障 害 児
田中 裕子氏(障害のある子どもの放課後保障全国連絡会 事務局長)
④保 育
杉山 隆一氏(大阪保育研究所 代表)
 代用の一人でもある、同友会の茨木氏は「社会福祉への財政支出が抑えられる中で、四月の報酬改定の影響、あるべき報酬単価とは、人材確保について、支援の質の保障などなど、密度の濃い学びとなりました。共通課題について分野横断の連携と取り組みが大切とあらためて感じられた学習会になりました。」とコメットを上げています。
【峰島氏の問題提起】
※様々な社会保障制度改革等の情勢を受けて。
(1)「我が事」の総括、反省もない新展開?・新たに国民拠出を提起できない財政的行き詰まりのなかで
・分野等の蓄積抜きの「ごちゃまぜ」、「兼務・兼任・兼用」「1 人化」「共生型」「一体的運営」等の専門性抜きの「丸ごと化」「他分野進出」、補助金の目的、外使用の公益的取り組み、地域公益事業、「制度外サービス」への「地域住民
等」の狩り出し、等々の「我が事」施策の進展はわずか
・財政審中心の「地方自治体」による経営難事業の統廃合もすすまず(今は医療と福祉の連携、大規模化・多角経営による効率化、地方自治体言及なし)
・規制改革会議の「制度内外サービスの組み合わせ」も拡充の解禁のみ
・骨太方針の財政健全化の重点、病床数削減計画は、市町村で個別病院名を挙げてまでいかず(10.22厚労大臣提案では言及なし)
・「我が事」フォローアップ委員会は「まず検証を」と言わざるを得ず
・「全世代型社会保障」の目玉「介護助手」も「介護助手も含めた適材適所」であり1年持たずは明白に
・これらを総括することなく「新組織」ではこれらを後景に押しやって「新たな「大義名分」を引っ張り出して「我が事」でほぼできていない「生産性の向上重点」を新しく描いているだけ
(2)安倍の「終活」をどのように迎えるのか
・政治変革と結びついての展開が私たちにも要請されている
・新しい方向は新しい改悪勢力ともなり得る
上記(1)で後景に追いやれらた事も、いつ新勢力で出てくるかわからない
(3)社会保障・福祉でいくと
・当面の論点の一つは、新たな大義名分・労働力不足施策への対抗と人材確保でないか
・さらに、マニュアル化した一面的な支援内容の強制・財政誘導に対して、その介入を許さずに、権利としての福祉を守る経営理念に即した支援水準確保のための保障を公から引き出す運動と政策・要求づくりでないか
・依然として国施策の展開は社会保障・福祉「丸ごと」、私たちは分野ごとの対抗だけでよいのか、経営体の種別・分野を超えた、かつそれぞれの固有性を尊重した運動だけでなく事業連携も
Ⅳ.報酬単価等への問題提起
1.国民から付託された権利としての福祉を守ること第一に
・福祉事業経営の矛盾はより激しく利用者の権利としての福祉に込められた多様な願いに応えること制度の枠内、主には国補助金内でそれらを実施せざるを得ない
・矛盾を作り出した元への運動の広がりづくりと、現実の矛盾の表れへの対応も必要、第一の基準を堅持しつつでないか、矛盾対応の一つとしても事業連携は必要ではないか例)重い人ばかりで大変、ただしそうしたところがあるから他事業所は成り立っている
2.ミッションを守る事業運営への補助金の在り方の検討を
・現行の報酬単価等の補助金の仕組み-基本単価と加算 基本を下げて加算重点に、加算は支援内容限定、それによる支援内容への財政誘導による介入と統制支配
・基本単価の意義を改めて検討を
障害の骨格提言 報酬の8割は国家公務員並みの人件費保障に積み上げ方式による必要な人件費の算定、措置費の事務費それが移行した支援費の最初
・現在の職員要求としての生活給-勤続年数による昇給も利用者の多様な要求に応えるミッションを持った支援に必要な職員配置と事業費-給食費や送迎費、居住費も
・加算は、これら以上のこれらから外れる個別・体制的対応を必要とされるものだが、処遇改善費は加算と同様だがこれでよいのか、加算がないと経営できないでよいのか、どこでも必要なことが加算になっていないか
3.公的財政責任の基あるいは公的補助金で運営される事業の経営形態別区別が必要では-社福・非営利・営利・暴利-
・営利企業参入増のなかで、算術平均の標準化は全体の営利化・暴利化に
・公的補助金の営利・暴利転用の禁止をもっと具体的に人件費の上述による規制、社会的企業として国際的動向の適用など
・公的な性格を強く持つ社福法人(認可、条例での優先的位置など)の意義を、具体的に
・内部留保による福祉目的外使用はあり得るのか、整備費補助の特例があっても
・公的性格から規定される地域拠点や優先的位置などに応える継続性・系統性・地域性の必要・正規常勤の配置基準や運営協議会などの固有性、新設整備の優先性
4.福祉事業の公的補助の財源等の在り方も検討を
・財源として
 消費税は妥当か-無償化、処遇改善義務的経費でない、特別会計でもない「目的税?」は妥当か、無償化がいわれてきたなかで、改めて利用料、応益負担、その設定方式、は妥当か
・財政誘導による支援内容介入と補助単価の設定方式
・処遇改善の要件としてのキャリアパス
・無償化の対象除外によるホテルコスト化
 こうした実態と声をどう広げていくか、運動の明確な提起が必要です。