大阪障害者センター 壁ニュース

1型糖尿病患者の「障害年金打ち切り問題」訴訟 大阪地裁で完全勝訴!

「壁ニュース」テキスト版 2019/04/12

1型糖尿病患者の「障害年金打ち切り問題」訴訟
大阪地裁が国の処分は違法として完全勝訴!

 若年で発症することが多い「1型糖尿病」の患者9人が、症状の改善が見られないのに、障害基礎年金の支給を打ち切られたのは違法として、国に年金の支給再開を求めた訴訟の判決が4/11、大阪地裁で行われ、三輪方大裁判長は国の処分は違法として取り消した。
 訴えていたのは大阪府、奈良県、福島県在住の27~50歳の男女。いずれも未成年の時に1型糖尿病を発症し、障害基礎年金を申請して「日常生活に著しい制限を受ける」状態である障害等級2級と認定。それぞれ年間約77万~100万円を受給していました。
 だが国側は2009年に1人、16年に8人について障害等級が3級に下がったとして支給を停止した。患者らは「一部の原告は重い低血糖の発作で意識障害や昏睡(こんすい)状態になっており、症状は改善されていない。偏見で就労も難しく、年金を打ち切られた影響は大きい」と訴えて、一方の国側は処分は適法として請求棄却を求めていた裁判です。
 こうした、1型糖尿病患者は、若年で発症し、医療費負担も大きく、かつ少雨蝋等も困難なことが多く、こうした一方的な年金打ち切りは、まさに死活問題として一斉に声を上げたものです。
 同時に、これらの措置が、他の障害の分野でも年金打ち切り等に波及したこともあり、障害年金問題の大きな焦点として注目されたものです。
 この勝訴を受けて、弁護団は声明を行っていますので、その内容をご紹介します。

【弁護団声明】
 本日,大阪地裁は,原告ら9名中,8名に対して平成28年12月7日付障害基礎年金の支給停止処分,1名に対して平成28年11月28日付障害基礎年金の支給停止を解除しない処分を,いずれも,取り消すとの原告ら全面勝訴の判決を言い渡した。
 障害基礎年金を受給する権利は,障害を持つ者の生存権を支える重要な権利である。
 原告らが罹患している1型糖尿病は,根本的な治療法が確立しておらず,ひとたび発症すると,症状が改善することは見込まれず,程度の差こそあれ,生活上の厳しい負担が生涯続く。厚生労働大臣は,原告らの日常生活に著しい制限がある状態にあることを認めて障害基礎年金の受給権を認め,障害基礎年金を支給してきたにもかかわらず,突然,「障害の程度が厚生年金保険法(括弧内省略)施行令に定める障害等級の3級の状態に該当したため,障害基礎年金の支給を停止しました。」とか,「請求のあった傷病については,国民年金法施行令別表(括弧内省略)に定める程度に該当しないため。」などという,理由にならない理由で,一方的に原告らの障害基礎年金の受給権を侵害する処分を行った。
 本判決は,支給停止処分が「受給権者の生活設計を崩し,生活の安定を損なわせる重大な不利益処分である」とし,相当期間にわたって障害基礎年金を継続的に支給していたにもかかわらず,一転して,支給停止処分をしたことが,違法なものであったとして取り消したものであり,国の,障害基礎年金の受給権に対する安易な考えを断罪したものと評価することができる。当弁護団は,かかる判決を言い渡した大阪地裁の英断を高く評価するものである。
 また,本判決は,障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消判決が確定すれば,厚生労働大臣において,「支給停止の解除の適否自体についても再度検討することも考えられるところ」であるとも指摘した。行政訴訟は長期間を要することも多いところ,本判決は,争点を絞って判断を示すという訴訟指揮を行うことによってで,早期に判決を言い渡し,もって,原告らの迅速な救済を図ろうとしたものと考えられ,その点でも,重要な意義を持つものである。
 国は,障害基礎年金の受給権の重要性に鑑み,また,大阪地裁が原告らの迅速な救済を図ろうとしたことを重く受け止め,控訴を断念するべきである。
 その上で,原告ら9名中8名に対して障害基礎年金を支給するとともに,支給停止の解除申請中となる1名について,判決の指摘する通り,「支給停止の解除の適否自体」を,再度,適切に検討し,直ちに,支給停止を解除して支給を再開するべきである。
 また,本判決が違法と断定した処分通知の理由不記載は,日本年金機構における1型糖尿病の障害等級認定手続の問題に基づくものであるから,日本年金機構においては,現状の認定手続を抜本的に改善し,更新時においては,当該年度の認定医の判断のみに基づいて,安易に支給を停止せず,過去の認定医の判断を踏まえて総合的に判断する態勢を整えるとともに,現状の認定システムにおいて不利益な判断を受けた1型糖尿病の患者について,判断の見直しを行って,現状のシステム不備によって生じた不利益に対処するべきである。
 当弁護団としては,本判決の趣旨に鑑み,国に対して,障害基礎年金が受給者の生活において有する重みに留意し,安易に不利益な処分をせず,十分真重に検討し,受給権者の生活を不当に不安定にすることのない認定並びに判断の体制を構築するよう強く求める次第である。
       以 上

 障害年金問題は、様々な課題を抱えている中で、こうした判決がどう影響するのか、また、国側控訴が行われるのかも含め引き続き注目が必要です。