大阪障害者センター 壁ニュース

総合支援法改訂への見通しは?~自立支援法違憲訴訟団と国との12回定期協議開催

「壁ニュース」テキスト版 2022/01/17

障害者総合支援法改定への見通しは?
~自立支援法違憲訴訟団と国との12回定期協議を開催~


新年あけましておめでとうございます。旧年中は、配信協力ありがとうございました。
本年も激動の年となりますが、できるだけタイムリーな内容でニュース配信を行ってまいります。
引き続き、ご活用のほどよろしくお願いします。

 新型コロナ禍延期されていた自立支援法訴訟団と国(厚労省)との第12回定期協議が1・11WEB活用で開催されました。 
 この定期協議は、国との基本合意を受けて開催されるもので、ここでのやり取りは一般的交渉とは異なり、正式な国側の制度改正への進捗状況等に合わせた公式な見解となるだけに、総合支援法見直し議論が進む中、その方向性等について注目されるものとなりました。
 なお、訴訟団は、協議に先立ち、ここの元原告の現状交流等緊急学習会を開催し、当該の協議に臨みました。
 なお、注目される競技であることから140名をこえる全国からの参加者がありました。
 以下、当日の協議の概要を取材メモ(障連協・井上とりまとめ:公式な議事録等は公開されてません。)を紹介します。

【第12回定期協議報告】

※政務次官あいさつ:様々な制度改善・現在3年後の見直し・今回の意見交換を踏まえ、今後の制度改善に生かしていきたい。

※担当者:各課課長
※元原告
・家平(東京):定期協議の意義
・堀口(大阪):支給量・コロナ対策・所得補償・福祉機器
・村田(埼玉):グループホーム
・小山(奈良):65歳問題・介護保険優先
・宇都宮(滋賀):施設入所支援(職員配置:夜間・災害時・日割り単価・職員不足:職員の条件整備)

【要望・協議概要】
(※は厚労省回答・●は協議後の要望)

第一、基本合意の尊重
※基本的には、基本合意や骨格提言を尊重していくことや利用者本位の制度設計について努力してきた。今後も引き続きこの立場を堅持しながら新しい課題も含め、部会審議等も含め検討していきたい。
※今回の要望書は、次回の障害者部会へも提案を行う。

第二、介護保険優先原則
※基本は、保険優先原則は、全国民的課題として制度全般の建付けの基本となる。しかし、一律的な取り扱いではなく、十分個々の障害者の状況に応じて必要なサービスが提供されるよう支給決定についての配慮を適時通知してきている。裁判等の個別の事案については、発言できない。
※各自治体で取り扱いの格差があることに対し、今後どのような対応が必要か検討を行う。
※65歳時点で国庫補助基準の変更は制度上ある。しかしながらこの基準で財政上の問題と支給決定は別の問題と考えている。
●介護保険優先を恫喝的に活用する自治体に対し、こうしたことが起きないような指導も含め、適切な指導通知等の徹底を!

第三、就労時ヘルパー利用
※個人の経済活動に公費を使うのはいかがなものか等の議論や雇用側の合理的配慮(差別解消法もふくめ)の観点から、雇用と福祉の連携については、引き続き議論が必要。
※地域生活支援事業での対応については、四日市市等2自治体で8名が活用、この間コロナ禍での利用抑制等があったが、本年度から9自治体が実施開始。
※新制度の実施状況等を踏まえながら引き続き検討をしていきたい。

第四、重度訪問介護の支給決定
※手待ち時間も報酬に反映する通知を出した、Q&Aの資料は参考資料として提示したが、その趣旨に誤解のないよう再度徹底をはかりたい。
※財政的事由からその支給量を限定することは、制度運用上適切ではない。

第五、入院時ヘルパー利用
※入院時は基本は病院が対応すべきじこうではあるが、重度障害者の実態に合わせ新たに入院時のヘルパー利用については、医療機関との調整が必要だが、単にコミュニケーション支援にとどまらず、必要な直接的介護等も包含したものと考えている。
※90日ルールは、包括医療費が90日以降減産されることから、そうした状況変化に対し、90日以降のあり方を再検討する自治体の判断は合理性がある。しかし90日をその上限とする判断とは異なることについては、周知したい。
※ただ、医療サイドでもこうした支援技術の習得等も課題であり、現在調査研究でこうした支援の実態や必要性の調査を行っており、引き続き区分対象者の在り方も含め検討を行っていきたい。
※コロナ禍での対応も通知したところである。
●実際に医療サイドでコロナ禍で、利用を制限する実態もある。また対象を区分6以外でも活用できるよう拡充すべきである。

第六、食事提供加算・送迎加算
※制度の建付け上、経過措置とされてきた、現在調査研究で児の実態等を把握しているが、引き続きこうした結果も踏まえ慎重に検討していきたい。
●食事や送迎の必要性を加味して恒久制度として拡充してほしい。

第七、報酬支払い方式
※基本は、他法やサービス利用の多様性に対応していけるよう日割り方式が前提の制度となっており、今後も引き続き経営実態等も踏まえ、その在り方等について加算等の在り方を検討していく。
・コロナの影響
※様々な補助制度等や特別基準などを通知して支障のないよう配慮してきた。

・日中・GHへの影響
※重度、高齢化に配慮し、医療的ケアとうについても報酬改定等を行ってきた
※生産活動強化のための支援制度や報酬上の加算措置などを拡充してきた、コロナ可での影響で、就Bは工賃が微減、就Aは微増の状況、こおれまでの生産活動活性化支援事業に加え、生産活動拡大支援事業などの補助制度を活用して、工賃収入が増える仕組みを考えていきたい。
※グループホームについても夜間体制強化等の加算を創設してきている。
※福祉人材の処遇改善についても加算制度の改善を図っている。
●少なくとも人件費等の運営単価は月割にするべきで、日割り単価方式は骨格提言にも相反する制度ではないか

○グループホーム制度改定の方向性
※調査研究の中で、一人暮らしを望む声もあり、そのための仕組み作りを検討している。しかしながら、様々な議論もあり、部会の中間整理でも、あくまで利用者ニーズを前提として、継続的に利用できる仕組みもふくめ、慎重に検討していきたい。
※標準利用基準を前提に考えてるのではなく、あくまで本人中心型の制度とするよう引き続き検討していく。
※本人中心型の考え方は、決して自己責任や家族責任を強調する考え方ではない。
●軽度者の追い出しや制限につながらないよう、骨格提言や権利条約にもとづく、「特定の生活様式を義務付けられない」よう「区分で居住地が決められ、利用期間が制度で縛られること」のないよう十分配慮してほしい。

第八、利用者負担制度
※民法や他法の関係もあり、扶養義務制度を前提とした制度の建付けであり、権利委員会の包括所見に抵触するものとの認識はない。また子育て支援策との関係で、保育無償化等とも連動した施策改定を行ってきた。
※制度設計上、公費を伴う支援について、その在り方については、制度継続性や国民的理解のあり方を含め、引き続き慎重に検討していきたい。
●あくまで、家族責任論ではなく、子育てでも一般子育てと異なる障害児支援の必要経費等を十分検討したうえで、障害福祉サービスの位置づけと利用料問題を検討してほしい・

第九、自立支援医療の利用者負担
※重要な課題ではあると考えるが、多額の財政が必要となることもあり、引き続き検討していきたい。

 今回のこうした要望等は、正式に現在協議の続く「3年後見直し議論」を続けている、社保審障害者部会にも紹介されることとなっており、基本合意実現に向けて、その趣旨を反映した制度改善へとつながるよう声を広げていきたいものです。