大阪障害者センター 壁ニュース

大阪府「旧優生保護法に関する取り組みについて」~相談窓口を開設・一方仙台地裁が判決!~

「壁ニュース」テキスト版 2019/05/30

大阪府が「旧優生保護法に関する取り組みについて」を配信!
~一時金支給法成立を受けて、相談窓口を開設・一方仙台地裁が判決!~

 旧優生保護法による強制不妊手術問題は、現在も、札幌や仙台、大阪、神戸など全国7つの地方裁判所で訴訟が提訴され、各地裁での審議が展開されていますが、こんな中、国のレベルでは、超党派の議員連盟が中心となり、「旧優生保護法被害者救済法案」が提案され、4/24全会一致で成立しました。
※[旧優生保護法]「不良な子孫の出生防止」を掲げ1948年に施行。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身で、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人の同意がない不妊手術を認めていた。96年に差別的条項を削除した「母体保護法」に改定されるまで、障害者ら約2万5千人に不妊手術が行われ、うち1万6500人は強制だったとされています。

 この法案については、原告や弁護団・その他の団体からもいくつかの批判はありますが、ともかく一時金支給法として実施されることになっています。
 こうした動きを受けて、大阪府は、5/9「旧優生保護法に関する取り組みについて」を公表し、「専用相談窓口」を設置してきたものに加え、新たに「旧優生保護法一時金受付・相談窓口」を設置するとしています。
『専用窓口では、「救済法」に基づく一時金の請求を受け付けるとともに、面談や専用電話により、個人のプライバシーに十分配慮の上、ご本人やご家族等からの様々なご相談にお応えいたします。』としています。具体的な窓口や一時金請求等の手続きは、以下の通りとなっています。

【相談窓口の概要について】
1.開設時間     毎週月曜日から金曜日(年末年始、祝日を除く)9時から12時15分及び13時から18時
2.電話番号    06-6944-8196      ※専用ダイヤルのため、一時金の受付・相談以外のお問い合わせはご遠慮願います。
3.FAX番号   06-6910-6610  
4.メールアドレス 
ysoudan@gbox.pref.osaka.lg.jp
5.相談内容 
・「救済法」に基づく一時金請求の手続きについて
・旧優生保護法の優生手術等に関するご本人やご家族からの相談 など
6.面談について
 面談をご希望される場合は、事前にメール・お電話等でご予約をお願いします。   

【旧優生保護法一時金支給制度の概要について】
 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方に対して、一時金が支払われます。

(1)対象者
(ア)又は(イ)に該当する方で、現在、生存している方が象となります。    
(ア) 旧優生保護法が存在した間( 昭和23年9月11日から平成8年9月25日)に、優生手術を受けた方
(母体保護のみを理由として受けた方を除く)
(イ)(ア)と同じ期間に生殖を不能にする手術等を受けた方
(下記(a)から(d)のみを理由として手術等を受けたことが明らかな方を除く)    (a) 母体保護   (b) 疾病の治療  (c) 本人が子を有することを希望しないこと        
(d)(c)のほか、本人が手術等を受けることを希望すること
(2)対象者の認定等
(ア) 一時金受給権の認定は、請求に基づいて、厚生労働大臣が行います。
(イ) 請求期限は、法律の施行から5年です。
(ウ) 都道府県知事・厚生労働労働大臣は認定に必要な調査を行います。
(3)支給金額
一時金の額は、320万円(一律)です。

【一時金支給手続について】

◇手続方法

○大阪府の「旧優生保護法一時金受付・相談窓口」に請求書(様式1)を提出してください。郵送による提出も可能です。
○請求書を提出する際には、以下の資料を添付してください。
・住民票の写しなど請求者の氏名、住所又は居所を証明する書類
・優生手術等を受けたかどうかについての医師の診断の結果が記載された診断書(様式2を使用して下さい)
・上記の診断書の作成に要する費用が記載された領収書など(様式3を使用して下さい。一時金の支給が認められた場合、診断書作成費用が支給されます)
・一時金の振込を希望する金融機関の名称及び口座番号を明らかにすることができる書類(通帳やキャッシュカードの写しなど)
・その他請求に係る事実を証明する資料(例:障害者手帳、戸籍謄本、関係者の陳述書、都道府県や医療機関等から入手した優生手術等の実施に関する書類など)

○一時金の受給が認定された場合、御指定いただいた金融機関の口座に独立行政法人福祉医療機構から一時金が振り込まれます。

この救済法の趣旨をよく理解して対応を
 今回のこの救済法では、前文で以下のような内容が定められています。
『旧優生保護法のもとで不妊手術などを受けた人が「心身に多大な苦痛を受けてきた」として、法律を制定した国会や、執行した政府を意味する「我々」が「真摯に反省し、心から深くおわびする」』とされ、合わせてこの成立にあたって、安倍総理大臣は「多くの方々が、生殖を不能にする手術などを受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことに対して、政府としても旧優生保護法を執行していた立場から真摯(しんし)に反省し、心から深くおわび申し上げる」としています。そのうえで「法律の趣旨や内容について、広く国民への周知などに努めるとともに、着実に一時金の支給が行われるよう全力を尽くしていく」としています。そして「このような事態を二度と繰り返さないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、政府として最大限の努力を尽くしていく」としています。
 もちろん、訴訟との関係は直接別の問題ですが、この法の趣旨をよく理解した上での当事者の対応を行うとともに、丁寧な相談浸透が適切に行われることが求められます。
 実際に、この法成立後の全国の申請者は百人にも満たないと報道されていますが、なぜ申請が行われないのか、その背景や個別の思い等を大切にしながら、法の趣旨を当事者に理解してもらい、丁寧な相談支援等を行っていくことが求められます。
 また、この一時金支給ですべてが終わることではなく、国の制度とはいえ、こうした強制不妊手術という深刻な権利侵害が是認されてきたのか、抜本的な問題について、障害者の権利保障の視点からその制度の再点検を行っていくことも大切です。
 特に、現在も新型出生前検診等により障害の可能性のあるとされた新生児の堕胎等の処置が広がりつつある状況なども踏まえ、しっかりとした総括と対応が求められるところです。

新型出生前検診

 2012年8月29日、夕刊各紙が「血液でダウン症診断 開始」というニュースを世に伝えた。この記事が、日本での「新型出生前診断」開始を告げる“始まりの鐘”でした。 現在、日産婦の倫理委員会は、新型出生前診断の要件緩和の指針をまとめた。“施設の拡大ありき”で終始した議論を見る限り、月日は流れても、その本質はまるで変わっていないと言わざるを得ません。障害のある子どもやご家族と接する機会が少ない産科医だけで、十分なカウンセリングが行き届くとは考え難い状況です。言わずもがな、医療機関としては“収入源”でもあり、検査の勧誘が進む可能性も危惧されています。
 報道で「安易な中絶」という言葉を見聞きしますが、安易に中絶を選択する夫婦などいないという事です。新型出生前診断は10週から受ける事ができるが、人工中絶が許される21週まで時間的余裕はなく、それぞれの夫婦が悩みに悩み抜いて出した結論のはずです。 しかしその裏で、悩んだ結果、それでも9割が中絶を選んだという数字が現実として転がっているのが現状です。染色体異常や障害が判明した際に、子どもやご家族を支える制度やシステムが、この国にはあまりにも少な過ぎる様相を如実に示しています。旧優生保護法の中で、「選ばれる生命」という優生思想の波及が生み出した大きな人権侵害をもう一度しっかりと総括し、「生命の尊厳」に立ち戻った仕組みを構築することこそが、本来の総括となるべきもので、優生思想と決別するということは「命は授かりもの」という価値観を深めることであり、生命倫理の確立につながる視点で、権利条約にもとづく障害者の権利保障をしっかりと担保できる制度の拡充も今緊急に必要な課題であることをしっかりと受け止める必要があります。