大阪障害者センター 壁ニュース

「重度訪問介護」 大阪府が単独補助制度を検討中か?

「壁ニュース」テキスト版 2019/08/16

「重度訪問介護」の制限規定の見直しも?
~大阪府が単独補助制度を検討中か?~

 重度訪問介護は、日常的に介護が必要な重い障がいがある方のご自宅に、ホームヘルパーが訪問し入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言や、その他の生活全般に関わる援助、または病院まで公共交通機関を使った通院や外出時における移動中の介護、見守り等などを総合的に行う、重い障がいのある方のご自宅(居宅)での地域生活を支える障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。しかし、こうした多面的なサービスであるべきものですが、「通勤・通学」等は対象とはなっていません。その理由としては「経済的活動」等については、会社や学校が対応すべきものとして、この支援の対象から除外されていました。
 しかし、実際には、労働法上等でこうした通勤補助制度等はなく、実際に相談支援等でピアサポーター等で仕事をしている重度障害者の通勤保障などが除外され、こうした制限の撤廃を求める声が以前から上がっていました。

 こうした問題が大きくクローズアップされたのが、今般の参議院選挙後の状況です。
 今回の選挙だ「れいわ新撰組」が大きく比例票を獲得し、初の重度肢体障害の国会議員が誕生しました。
 重度の身体障害のある2氏の議員活動に支障がないよう、本会議場の議席改修といったバリアフリー化が行われたが、先の規定で「個人の経済活動を公費で支援することに賛否があるとして、通勤時や自宅・職場で働く間の利用を認めていない。」中で、重度訪問介護が使えない状況があることを大きく訴えていました。
 参議院では当面こうした二人への介護サービス費用を参議院で持ちながら、早急にこうした重度訪問介護の制限規定の見直しを検討するとしています。

 一方、こうした動きに対し、政界からは様々な意見が出されています。
●松井一郎大阪市長(7/31:東京新聞)

「介助制度がないと働けないのか。違うと思う。支援を受けずに働いている人もいる」と疑問を呈した。障害者団体は「問題を理解していない」と批判している。松井氏は記者団の取材に、三月まで知事を務めた大阪府では「公的補助を受けずに電車通勤している全盲の職員もいた。危険だが、努力で克服していた」と話した。障害者の就労については「(介助の)公的補助がその人の収入の二倍、三倍になるなら、職業を持つこと以外で自立してもらう方が合理的ではないか」と述べ、補助の財源となる税負担と障害者の収入の「バランスを取るべきだ」と語った。
 一方で、介助が通勤や勤務の際に受けられない現行制度を見直す場合は「国会議員も一般人も公平・平等にすべきだ」とも指摘した。

●小野田紀美参議院議員(自民党参議院議員:岡山)
 木村・舩後両議員は重度の身体障害があるために7月月30日、参議院が当面の間は介護サービスの費用を負担すると発表した。
 Twitterで小野田紀美はその対応について
【え!? バリアフリー化対応は分かるけども、これは議員特権になりませんか…? 当面って何】と投稿し、こう続けた。【国会議員は文通費として歳費とは別に月額100万円が支給されます。みんなこのお金を使って、私設秘書さんとか、事務員さんとか、政策サポートとか、事務所開設の諸経費とか…要は自分が公務を行うサポートを揃えていると思っております。政党助成金もしっかり交付されているのにどうして】
※この意見に対し、 《交通費は、目的外に使えないのではないですか? 小野田紀美が喚いている、交通費を秘書の給与にしている発言は、目的外使用で国会法違反で完全アウトでしょ》 《文通費を介護に使えということですかね。健常者議員は色々なことに使えるようですね》 《まさか平然と交通費を秘書の給与に目的外に流用して居ると公言され!貰ったお金は好き勝手 》
 この交通費は、基本的に目的外使用は禁じられており、これまでも様々な批判が行われてきました。

 こうした問題は、基本的にはもっと早期に解決され中ればならない課題でした。
 障害者権利条約では、「障害による差別を禁止し、その内容は、障害を理由とした万人に対する、政治権、経済権、社会権、文化権、市民権の全分野にわたる、人権と基本的自由のあらゆる区別、排除、制限を、さらに障害のある人に対する合理的配慮の欠如を意味する。」とされており、この批准国としてもっと早期にこうした議論が行われることが必要な課題であったといえます。

 こうした状況下、JDFは、8/5「障害のある議員の議員活動の保障について(要望)」を行っています。
【要望内容】
1.議員活動に関わる配慮や環境整備については、今後必要となるそれぞれの場面において、議員本人の意思を十分にくみ取って対応し、国民の代表者としての活動が十分できるようにしてください。

2.今後とも多様な障害を持つ議員が誕生することを期待し、如何なる障害があろうとも議員活動を行えるような制度や議会運営のあり方を整えてください。

3.介助を必要とする議員に対しては、議員活動中も重度訪問介護が継続され、公費による介助が行われるようにしてください。同様の問題で苦しんでいる多くの障害者に波及させるためにも、経済活動であるかなどに関わらず移動や介助の支援を利用できるよう、制度を検討し見直してください。

4.上記のことを通じて、障害の有無によって分け隔てられることなく議員活動ができることを、国としても社会に積極的にアピールしてください。
 
 さらに、8/7の産経ニュースでは、以下のような報道が行われました。

大阪府、重度障害者の就労・通学を独自支援来年度実現目指す

「大阪府の吉村洋文知事は7日、常時介護を必要とする重度障害者が通勤・通学時や就労時に、介護サービスを公費で受けられる府独自の支援制度を創設する意向を明らかにした。大阪市とも連携して制度設計に乗り出しており、来年度から導入したい考え。国の重度訪問介護は、通勤・通学や就労時は対象外。7月の参院選で初当選した重い身体障害のある参院議員2人が、仕事時の公費負担を認めるよう見直しを求め、参院が当面の介助費負担を決定していた。障害者総合支援法に基づき、市町村は重度障害者の生活全般に24時間体制の訪問介護サービスを提供。利用者の自己負担は1割で、それ以外は公費でまかなうことになっている。だが通勤・就労は、事業主が本来的に負担すべき「経済活動」とみなされ、公費投入が認められていない。通学時も対象外となっている。府の検討する支援策はこうした現行の運用ルールを補完する内容で、財源は府と市町村が2分の1ずつ負担する形を想定。今後市町村へのヒアリングを行い、対象範囲の詳細を詰めた上で、来年度予算に費用を計上する方針。会見で松井一郎・大阪市長も「国に先駆けて通学支援をまず実現したい。学ぶことが厳しい状態を解決したい」と意欲を示した。一方、吉村氏は2千万円以上の歳費を受け取っている国会議員は介助費を自己負担すべきだと改めて強調。府の支援制度でも、一定の所得制限を設けるとした。府によると、府内の重度訪問介護の利用者(18歳以上)は昨年9月現在で約2500人で、全国都道府県で最も多い。重度障害者の訪問介護をめぐっては、今年度からさいたま市が独自に在宅就労時の介護サービスの提供を始めている。」
 すでにこうした情報は、他の関係者からも有力な情報として流されていますが、こうしたことをきっかけに、重訪等の制度が大きく実態に合って改訂されることが望まれます。

 こうした制度制限撤廃への動きがある一方で、重度訪問介護の制度そのものにもまだ多くの課題が残されています。
その第一は、報酬が低く、長時間介護となるため、ヘルパーの担い手や、実施事業所が増えないこと。
第二に、「なんでもありの介護」とはいえ、事業所やヘルパーによって、介護保険同様の様々な制限、嗜好品の購入や化粧等はできない等の制限が行われる場合があることです。
 これは、介護保険でのヘルパーべからず集を前提に対応する事業所もあり、本人の望む生活を保障していく制度としての根本的な矛盾を持っていることも現状です。
 そうした企画外支援は「自費負担」でという制度が前提に横たわっている中で、本当の意味での自分の望む「暮らし」への支援制度の在り方についてもこの機に、大きな国民的議論が求められます。