大阪障害者センター 壁ニュース

JDが障害者施策に関する公開質問状を公開!~各政党の回答は?~

「壁ニュース」テキスト版 2019/07/09

日本障害者協議会が、障害者政策に関する公開質問状を公表!
~参議院選挙を踏まえ、各政党の回答は?~

 2019年の参議院選挙は公示され、同21日投開票となり、いよいよ選挙戦がスタートしています。
 具体的課題での政党の主張をしっかりと精査し、自分たちの思いを託せる政治の在り方を選択することが大切な時となっています。
 前号では大阪消団連の実施した公開質問状の一部を紹介ましたが、今回は、日本障害者協議会(JD)の実施した政党アンケートの回答の一部を紹介します。

【JD公開質問状・回答】

□市民団体による、障害者権利条約のパラレルレポート作成への支援について
○自由民主党
 市民社会による活動の重要性は認識しており、幅広い意見を条約の実施促進に反映させることは重要と考えます。そのため、障害者政策委員会における議論やパブリックコメントを踏まえ、政府報告が作成・提出されております。他方、市民社会が政府の取組の進捗状況を客観的に評価する上では、基本的に政府から独立の立場から実施することが望ましいと考えています。
○立憲民主党 
 国際的な場面において、市民団体の皆さんが直接当事者の声を届けることは極めて重要であり、市民団体が出すパラレルレポートに制限をかけないよう配慮された財政面での支援も含め積極的な支援を検討します。
○国民民主党
 当事者の意見を障がい者政策に反映させるため、市民団体が果たす役割が重要であ
ることに鑑み、市民団体への支援のあり方について検討すべきであると考えます。
○公明党
 日本はすでに国連の障害者権利委員会へ政府報告を提出していますが、報告書の作成に当たっては、障がいのある方々の視点を反映させるため、障がい当事者や家族が委員として参画する障害者政策委員会において精力的な議論が行われました。その結果浮き彫りになった課題は、議論の整理として取りまとめられ、政府報告書の附属書として添付されています。また、障害者政策委員会において特に重要なものとして選定されたテーマは、附属書のみならず、政府報告書の本文にも明示的に反映されました。
○日本共産党
 日本の障害福祉を担い、施策を支えている多くの団体は国の重要なパートナーです。国は市民団体の意見に真摯に耳を傾け、パラレルレポートづくりにおける研究や翻訳などさまざまな奮闘にこたえる財政支援をおこなうことは当然です。
○日本維新の会
 市民団体のセカンドオピニオンを(財政支援を受けることで)歪ませないためになるべく避けるべき。
○社会民主党
 国連の活動は、加盟国の政府だけでなく、NGOや各機関が協調することが大切です。

□全体予算に占める障害者予算の割合と財源について
○自由民主党
 各国の人口や経済の規模等が異なることから、GDPに対する公的支出がどれくらいかという国際比較の中で議論することは適切ではない。重要なことは、GDPに対する障害者予算の割合の順位ではなく、障害児・者に係る支援に必要な予算をしっかりと確保していくことであると考えています。
○立憲民主党 
 誰もが生きやすい共生社会の実現のために必要な予算を確保します。
○国民民主党
 障害福祉従事者の処遇改善を行う予算など、障がい者政策に係る予算確保に努力すべきであると考えます。
○公明党
 日本が障害者権利条約に署名した2007年当時、5380億円だった障害福祉サービス関係予算額は、今年度1.5兆円となり、12年間で約2.8倍に増加しました。また、ハローワーク等における障がい者の就労支援や社会参加支援の充実、地域で活躍できる環境整備等を推進し、働く障がい者は昨年6月時点で53万人を超え、15年連続で過去最多を更新しています。今後も着実に予算を引き上げ、施策を推進していきます。
○日本共産党
 障害予算は予算全体から見ればわずかであり、早急にOECD諸国上位10位以内になるよう引き上げるべきです。社会保障予算の増加はまるで国がつぶれるかのように喧伝され、抑制が当たり前、財源はどうするのかと攻撃されます。しかし戦闘機を買うのに財源はどうするのかと問題になりません。社会保障の拡充は国民のくらしを安定させ、経済をあたためることにもつながります。
○日本維新の会
 障害者の割合は国により大きく異なるので、順位へのこだわりに合理性はない。
○社会民主党
 1つの指標としてOECD平均は重要だと考えます。

□基本合意と骨格提言について
○自由民主党
 先般の障害者総合支援法の改正は、社会保障審議会障害者部会において、「基本合意」や「骨格提言」の内容を含め、制度全般にわたり議論していただいた結果である報告書の内容のうち法律改正による対応が必要なものを措置するものです。例えば、高齢の障害のある方の介護保険サービスの利用者負担を軽減する仕組みを創設すること、入院中も重度訪問介護による支援を可能とすることなど、「骨格提言」の趣旨を踏まえた内容が含まれています。
○立憲民主党
 障がい者の参画を基本とした基本合意と骨格提言が取りまとめられた経緯を尊重し、今後、精査し党として検討を深めます。
○国民民主党
 「骨格提言」については、当事者の方の思いが詰まったものであり、これを段階的・計画的に実現していく必要があると考えます。
○公明党
 基本合意と骨格提言は着実に進んでいると認識しています。改正障害者総合支援法では、①高齢障がい者の介護保険サービスの利用者負担を軽減する仕組みの創設、②入院中も重度訪問介護による支援を可能とすることが盛り込まれました。法改正以外で改善できる案件についても、推進していきたいと考えています。
○日本共産党
 総合支援法が出されたときに、「基本合意」「骨格提言」にもとづく施策をいっぺんに実現するのは難しいので、附則で明記して、3年後に見直すとしました。しかしその見直しも応益負担の廃止をはじめとした中身はまったく反映されず、約束が反故にされてしまいました。基本合意は、国が司法の場で約束し、骨格提言は国の委託を受けて話し合った部会が正式にまとめた報告書です。国は基本合意と骨格提言にもとづいて国内法を整備する責任があります。
○日本維新の会
 基本合意と骨格提言はやや実現された。
○社会民主党
 障害者総合支援法は基本合意や骨格提言とかけはなれたもので、抜本改正に取り組まねばなりません。

□地域包括ケアシステムについて
○自由民主党
 人々の暮らしや地域の在り方が多様化する中で、地域に生きる1人ひとりが尊重され、多様な経路で社会とつながり、参画することで、その生きる力や可能性を最大限に発揮できる「地域共生社会」の実現は重要な課題。このため、地域共生に資する多様な地域活動の普及・促進など地域コミュニティ全体の支える力を強化しながら、世代や高齢者、障害者、児童等の対象者にかかわらず、包括的・総合的な相談支援や伴走型支援を行う体制の構築や、高齢・障害・児童等の福祉サービスの総合的な提供の促進など、「地域共生社会」の実現に向け、制度・予算両面から取組強化を検討してまいります。
○立憲民主党
 地域の絆を強め、医療・介護・教育などが連携することによって、地域包括ケアシステムを拡充し、地域の「支え合いを支える」仕組みを構築します。地域包括ケアシステムを、子どもからお年寄りまで全世代を支援するシステムへと進化させ、地域コミュニティの再生に努めます。
○国民民主党
 介護が必要となっても住み慣れた地域で暮らせるようにするため、地域包括ケアシステムの構築と定着が必要です。
○公明党
 誰もが住み慣れた地域で安心して老後を暮らせるために、医療、介護、住まい、生活支援サービス等の支援を地域の中で一体的に受けられる地域包括ケアシステムを構築します。また、高齢、障がい、児意など対象者ごとに充実させてきた福祉サービスについて、多様化・複合化するニーズに対応するため、それぞれの地域の実情を踏まえた地域包括型の支援体制を整備します。
○日本共産党
 地域包括ケアシステムは、生産性と効率性の向上のために介護、障害者・子どもの分野を一括する体制です。公的責任を投げ捨て、いっそうの社会保障予算の削減・抑制をねらうものです。それぞれの分野の専門性をいかしていくことが、利用者の人権を保障することにつながります。
○日本維新の会
 地域包括ケアシステムは、全国的にまだまだ道半ばであり、各地域の実情に合った仕組みが構築されていくよう、柔軟な運用を促進すべき課題である。
○社会民主党
 障害者の生活水準が引き下げされることのないよう、どちらの制度も選択できるようにすることが必要です。

□所得保障のあり方について
○自由民主党
 基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活及び社会生活を営むためには、特定の制度だけを改善するのではなく、総合的な対策が必要です。具体的には、障害年金や特別障害者手当等の支給に加え、障害のある人への就労促進や職場定着支援をさらに推進します。このほか、低所得者等については、障害福祉サービスの利用者負担を0円としています。また、障害基礎年金受給者には、消費税率10%への引上げ時(2019年10月)に合わせて実施する年金生活者支援給付金により、障害基礎年金とあいまって、今まで以上に生活を支えていくこととしています。
○立憲民主党
 障がいのある人のニーズを踏まえ、障がい種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、家族介護だけに頼らずに、障がいのない人とともに、安心して地域で自立した生活ができるよう、障がい者の暮らしを支える制度を拡充します。介護保険優先原則の廃止、障害年金の引き上げなどを検討します。
○国民民主党
 「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」に基づき、障害基礎年金の上乗せ支給を行うべきです。
○公明党
 障がい者の所得保障を充実する上で年金制度の果たす役割は重要です。これまで公明党は障がい者の就労を年金制度上評価する仕組みや特別障害給付金の創設などを実現してきました。本年10月からは、障害年金生活者支援給付金が実施される予定です。今後さらに、一般就労の拡大や就労継続支援を含めた障がい者の就労環境の改善などを通じて、所得保障の充実と社会参加の拡大を進めてまいりたいと考えます。
○日本共産党
 障害基礎年金の底上げが必要であり、厳しい認定基準や要件によって膨大な無年金障害者がおり、抜本的に改善が必要です。
○日本維新の会
 無年金障害者の解消
○社会民主党
 働くことによる所得とあわせて年金を充実させることで地域生活に必要な所得保障を実現すべきです。

□貴党の障害者政策の特徴についての質問
○自由民主党
 障害の有無にかかわらず安心して暮らすことのできる地域社会の実現に向け、障害のある人の社会参加の機会の確保等を旨として、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行います。具体的な政策につきましては、「総合政策集2019-Jファイル」に明記しており、自民党ホームページにも掲載しております。個別の政策を含めて、今後、関係者の皆様のご意見を伺いながらともに検討を進めて参りたいと思います。
○立憲民主党
 人口減少と高齢化の時代を迎えた日本にとって、多様な個人の可能性がこれからの力の源泉です。これからの日本には、大きなパラダイムシフト(社会の規範や価値観が変わること)が必要です。立憲民主党は、障がいの有無のみならずLGBT(性的指向・性自認)をはじめ、年齢や性別、価値観やライフスタイル、出自等々、あらゆるすべての差別を許さず、一人ひとりの生活を豊かにすることを通じて、多様な個人の可能性を力とする社会への転換をめざします。
○国民民主党
 「国民民主党 新しい答え2019」に掲載されている障がい者政策は、以下の通りです。障がい者・難病患者が住み慣れた地域で安心して自立した生活が送れるよう、「障害者差別解消法」の実効性のある運用を目指します。障がいの有無などにかかわらず、同じ場でともに学び、働く「インクルーシブ教育・雇用」を推進します。さらに、既存の発想にとらわれない新たな社会参加・就労機会の場を確保します。
○公明党
 共生社会の実現のために、障がい者施策を見直しつつ、必要に応じて、障害者基本法、障害者差別解消法、障害者虐待防止法などの法制度の改正を行います。また、障がい者が希望に応じて就労や社会参加を実現できるよう、障がい児と家族を支えるための医療・福祉・教育などの連携強化、障がい者の情報コミュニケーションの円滑化のための意思疎通支援、高齢化や「親なき後」の対応を含めた地域の福祉基盤の整備、就労移行支援や就労継続支援の強化、通勤・通学等の移動支援など、きめ細かい支援を推進します。さらに、2020年の東京パラリンピックの成功に向けて、障がい者スポーツ・芸術の振興や、ハード・ソフト両面にわたるバリアフリー化を推進するとともに、障害年金の改善など所得保障の充実に取り組みます。
○日本共産党
 「障害のある人とない人との平等」をかかげる障害者権利条約や憲法の規定にもとづき、障害福祉・医療の無料化と制度の拡充をすすめること、障害者への差別や虐待のない社会をつくるために力をつくすことを大きく訴えています。総合支援法にもとづく福祉・自立支援医療の自己負担総額は560億円(2017年度)です。本来、障害ゆえに必要な福祉や医療に負担が課せられること自体がまちがっているため、低所得世帯だけでなく、すべての障害者の福祉・医療の無料化を共産党は求めていきます。
○日本維新の会
 先般の公務部門での障害者雇用水増し問題に代表されるような、法定雇用率のただの「数合わせ」になってはならない。そのために職場での合理的配慮、適切な仕事の切り分け、周囲の理解の醸成など、現場の実情に即した支援を拡充すべきである。また、発達障害などを含め、障害者の状況は多様化しており、中長期の障害者労働政策を見据えて、若年者(小中高年代)へのキャリア支援にも重点を置いていくべきと考える。
○社会民主党
障がい者の社会参加を推進。障害者権利条約の理念を社会の隅々に徹底します。人間の価値を生産性で計る優生思想を許しません。差別をなくし、だれもが安心できるインクルーシブ(排除をしない)な社会を目指します。

※この他、強制不妊手術問題・障害者差別解消法・障害者政策委員会・障害者の労働政策・措置入院の退院後支援のあり方・障害者虐待防止法改正問題等多岐にわたった、質問とその回答が紹介されています。(詳しくはJDホームページからご参照ください。)

 こうした回答等をしっかり精査し、今後の施策への期待も含め、賢明な選択が求められるところです。