大阪障害者センター 壁ニュース

2.8旧優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会を開催!国民的運動を呼びかけ!

「壁ニュース」テキスト版 2022/02/10

2022.2.8旧優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会を開催!
~優生保護訴訟の意義を知り、国民的運動を呼びかけ!~

 2/8、集会実行委員会が開催する、「2.8旧優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会」が東京・大阪会場などに加え、WEB共用で開催され全国から300名を超える方たちが参加しました。
 ここでは、その概要をご紹介します。

【全国集会の概要】
○開催のあいさつ・・・全国優生保護法被害弁護団共同代表 新里宏二氏

 只今より 、優生保護法裁判の勝利を目指す全国集会を開催させて頂きます。
2018年1月、仙台地裁への提訴から始まり、全国 の 被害者25名が9の地裁・支部に 優生保護法 による強制不妊手術 による 被害救済を求めて提訴しました。既に4名の原告が亡くなっています。
 1948年優生保護法が成立し、 1996年、 優生条項が 、「障害者差別にあたる」として、同法が 母体保護法に改正された 後も、国は、「当時は合法であった」として、謝罪も補償も行うことなく被害を放置してきました。
 仙台、東京、大阪、札幌、神戸地裁で、6つの請求棄却の判決が 出されていますが、 4つの判決で優生保護法の違憲性が明確に認められています。
 国による強制不妊手術は 、原告等の人生を奪い、差別を助長してきました。しかるに、裁判所は違憲な法律による深刻な人権侵害に、除斥期間の適用を認め、国を免責し、 原告等の請求を認めませんでした。
 この2月22日大阪高裁、 3月11日東京高裁で判決がなされることになってます。 違憲な優生保護法による人権侵害に対する高裁としての初の判断が示されることになります。
 私達は、全国の支援者と原告等が手を結び裁判の勝利を目指し 、実行委員会を作り、本集会を準備してきました。賛同団体もゆうゆうに90団体を超え全国的な広がりを持ち、今後も原告等を支える大きく、自由な運動体への移行も期待されるところです。
 本日はコロナの蔓延と言うことから完全オンライン方式での集会です。集会では弁護団から裁判の状況の報告をさせて頂きます。そして、全国の原告が一堂に会するのは初めてのことですが、原告の皆さんに思いの丈を述べて頂きます。 さらに、特別報告として明石市の泉市長から優生保護条例の取り組みも熱く報報告頂くことにしています。2019年4月成立した一時金支給法による認定件数は、昨年2019年4月成立した一時金支給法による認定件数は、昨年12月末時点で96件と、強制強制不妊手術不妊手術被害者約25,000人の3.86%にすぎません。同法は優生保護法が違憲な法律であったことを前提にせず、さらに、320万円という一時金自体、被害に向き合ったものではありません。
 私は、「被害者が声を上げることが社会を変える力だ」と信じて活動してきました。本日の原告の皆さんの声をさらに大きな運動に押し上げ、必ずや優生保護法訴訟の勝利につなげていきましょう。また、一時金支給法の抜本改正を実現させましょう。
 みんなで障害のあるなしで差別されない社会を作っていきましょう。

○原告の発言・大阪弁護団・東京弁護団の裁判状況の報告
・大阪弁護団より裁判の状況報告
・大阪の原告より
・東京弁護団より裁判の状況報告
・東京の原告より
・北海道の原告より
・仙台の原告より
・静岡の原告より
・兵庫の原告より
・福岡の原告より
・熊本の原告より
※東京・大阪の弁護団からの報告にあと、全国の原告からこの裁判に対する思いなどが生々しい経験なども含め報告されました。(詳細等は実行員会にお問い合わせください。)

○明石市 泉房穂市長 特別報告
「旧優生保護法被害者等の尊厳回復及び支援に関する条例」について

 昨年の12/22些少の紆余曲折がありながらも被害者救済条例を成立させ、「市民の声で勝ち取った条例。明石の市民と街が、可決へ向かわせることができた」と涙声で語った明石市市長の泉氏からその経過や内容について、報告があり、この裁判へのエールが配信されました。(直接の視聴ができなかったため、ニュース記事からその思いをご紹介します。)

『弁護士経験のある泉市長は、夫妻から約3年前に訴訟に向けての相談を受けていたという。しかし、旧優生保護法下の強制不妊手術をめぐって全国で起こされている国家賠償訴訟は、原告にとって思うような結果になっていない。そうした中、明石市として何ができるのか、スピードが求められる中での模索が続いた。
 そこでたどり着いたのが「明石市・旧優生保護法被害者等の尊厳回復及び支援に関する条例」の制定だった。条例案について市民からの意見を募るパブリックコメントは、圧倒的な支持を得たが、9月議会では市の税金を支出することを疑問視する意見も出て、いったんは否決された。泉市長は可決までの経緯を振り返り「すぐに全会一致で可決されるほど容易ではなかった。ある意味、障がい者の置かれた苦難の歴史を感じさせられた」と語った。
 泉市長が4歳の時に生まれた弟は、障がいを持っていた。このことが福祉に目覚め、政治をこころざす原点となった。兵庫県は全国に先駆けて「不幸な子どもの生まれない運動(1966〜1972)」を進めていた時期があった。この時期に生まれた弟は、この世に「生」を受けていなかったかも知れない。
「障がい者が世間の仕打ちを受けるような社会ではなく、障がい者に寄り添う社会にしなければ」。そこから50年あまりが過ぎ、条例成立に向けて市内の障がい者団体どうしが手を取り合い、議員の説得に回った。「明石がこの法案を可決するところまで優しい街になったのは感慨深い。明石の街と人を誇りに思う。しかしまだまだ課題は山積している。これから国や兵庫県にも働きかける」目を潤ませて誓った。明石市の条例は12月24日に公布、施行される。
 旧優生保護法による強制不妊手術をめぐっては2019年、被害者に一時金320万円を一律支給する救済法が施行された。しかし金額の低さや手術を受けた本人に対象を限っていることなどの問題点が指摘されている。全国の受給者は960人(2021年11月末現在)にとどまっているという。
 救済法は施行から5年で見直すことになっている。今後の国への働きかけとして泉市長は「配偶者と、中絶手術を受けた人にも支援対象を広げ、金額を充実させるような法改正に向けて取り組みたい」と話した。』(ラジオ関西トピックス2021年12月22日より)
※条例パンフ等が紹介されています。(必要な方は事務局までお問い合わせください。)

○「二つの高裁の勝利をめざし、最高裁判所に向けた取り組みを」
藤原精吾氏(優生保護法被害者兵庫弁護団長)

1, みんなが見守る中、今日から2週間後、2月22日に大阪高裁、1ヶ月後には東京高裁の判決が言い渡されます。そして事件は最高裁でも始まります。
2, これまで出された6地裁の判決すべてで原告の訴えが退けられました 。到底納得できない判決です。裁判官が何故このような判決を書いたのか、私たちはこれから何をすべきか、どうしたら勝てるか、何ができるかを一緒に考えましょう。
3, 今日私たちは、共通の思いをもって集まっています。それは、
① 優生保護法による手術を受けた被害者に対する国の責任を認めさせ、謝罪させ、国家賠償によって償いをさせること。
② 優性保護法は法律の名において 障害者差別を正当化し、強化し、実行し、社会に根付かせました。このことを認めさせ、国会と政府に反省させ、この社会を差別のない社会、障害のあるなしに拘わらず総ての人が個人として尊重され、普通に暮らすことができる社会にするよう国が 、自治体が、社会全体がとり組むことを求めること。この思いを共有しています。そして、全国で進められている裁判はこの二つの目標を実現するためにそれぞれ各地の原告・支援者・弁護団がとり組んでいるのです。2つの目標を達成するためには何が必要か。それには現在の状況をしっかり見つめ、何が敗訴判決を招いたのかを知っておくことが必要です。
4,大阪高裁、東京高裁の判決の勝敗は予断を許しません。勝って当然の事件ですが、しかしこれまでの判決の流れからすれば、厳しい結果も考えておいた方がよいのです。しかし、私たちはそれを許す訳にはいきません。 勝敗何れの結果になろうとも、裁判の中心は最高裁に移ります。もちろん、ほかの地裁、高裁の裁判は続きますが、裁判官の目は上、最高裁の方を向いています。なぜなら、最高裁は最終裁判所であり、その結論は日本の裁判所をリードします。最高裁の裁判は全国の裁判の方向を決めます。
5,万一高裁で不当判決が繰り返されようとも、最高裁判所では勝つためにできることをやり切ることがこれからの運動です。高裁で逆転勝利という嬉しいことになっても、国は上告をしてくると思います。最高裁での裁判は書面審理だけで進みます。上告してから原則50日以内に上告理由書を提出します。それからはトンネルに入ります。何が議論されているのか外から判りません。
 ほとんどの上告事件では書面審理だけで、「上告を棄却する」と一片の通知が来て終わっています。早ければ大体大体3ヶ月から半年くらいです。
 堀木訴訟では上告してから何度も調査官と面会しましたが、理由書提出から5年経つまで裁判所は何の動きも見せませんでした。上告から5年目、事件の担当を小法廷から大法廷に移すという通知が来ました。さらに1年経って、大法廷で口頭弁論を開くという通知がありました。上告してから6年間、裁判は手探りで進んだのです。
6,しかし裁判勝利のための運動は休まず続けていました。各地で集会を開き、、何万通もの公正裁判要請署名を段ボール箱で最高裁に持ち込み、岡山から東京までの各市町村と議会をめぐる国民大行進を2回行い、大学や地域での学習会を無数にやりました。運動がなければ最高裁は事件を大法廷に回し、口頭弁論を開くことにはならなかったと思います。それは事件が障害のある人の人権に関わり、また社会保障制度の根本に関わるものであることを運動が示したからです。裁判の結果は上告棄却、堀木さんの敗訴となりましたが、「判決で負けても、運動で勝った」と総括しました。この事件が大きく報じられ、国民の誰もが知り、人権の意識が高まりました。障害者運動に取り組む人びとを育てました。
7,最高裁が高裁判決を見直し、口頭弁論を開かせるには何が必要でしょうか。
第一に、優生保護法被害者の権利が除斥期間で消滅するという考えを維持してよいのか再検討を最高裁に迫ることです。判決に私たちは、国民は納得していないことを裁判官に判らせることです。
第二に、、中国や北朝鮮、ミャンマーの人たちの人権を口にする政府に、足下の人権問題もあることを気づかせることです。堀木訴訟では1981年に国際障害年があり、障害者の人権の尊重を国内外で求められていました。 今年は日本が加入している障害者権利条約の実施状況についての第一回審査が8月に行われます。優生保護法による強制手術の被害者に補償するよう、22年前に自由権規約委員会から勧告されています。これに反する判決が出れば、障害者権利条約が求めている対応を裁判所や政府・国会が行って行っているのか、厳しく指摘されます。最高裁は法律だけでなく、政治的判断で動きます。選挙区や夫婦別姓の判決がこれを示しています。優生原告敗訴判決を許せない、との声を段ボ
ール何杯もの公正裁判要請署名、各地の集会、決議で市民の声市民の声で示し、無視できない状況作りましょう。
8,そのような状況をつくり、裁判所を変えるために、私たちはどのようにとり組むか。先ずは原告の痛みと訴えの正当性を裁判官に理解させることです。それには原告たちが受けた被害の深刻さ、なお続く社会的差別構造、そして除斥期間という一片の法律で重大な人権侵害を無かったことにしてはならないことを判らせることです。第二に、原告らの訴えを認めなかった地裁判決、または高裁判決に対して、障害当事者は勿論、市民の大多数が納得せず、怒り、裁判官が態度を改めることを求めている、と示すことです。
第三に、ハンセン病隔離法廷事件について、2016年4月25日、最高裁判所裁判官会議談話は反省とともに、全裁判官と社会に向けて、裁判所は「国民の基本的人権を擁護するために柱となるべき立場にある」(最高裁判所裁判官会議談話」)と明言したことを思い出させましょう。
何万筆の公正裁判要請署名、全国各地で集会や学習会やを開き、マスコミに報道させましょう。明石市は「旧優生保護法被害者等の尊厳回復及び支援に関する条例」を制定しました。これをお手本と、各地自治体でこのような条例をつくるよう求める活動も考えましょう。SNSも活用しましょう。
9,裁判は賠償金を取ることだけが目的ではありません。国に賠償を命じることを通じて、市民の意識を変え、すべての人が個人として尊重され、障害の有る無しで差別されない社会を作っていくことが目的です。そのために、国会を動かす、政府を動かす、自治体を動かす、そのきっかけを勝訴判決が作るのです。
私たちは、優生手術を受けた被害者の痛みを思い、決して忘れず、これを二度と繰り返さない社会を作りましょう。
皆さん、ともに歩んで行きましょう。
          
 この提起は、堀木訴訟などを戦ってこられた藤原弁護士ならではの提起で、運動の歴史を知る意味でも、しっかりと学びあうことが大切です。

○集会アピール案読み上げ・採択

最後に、集会アピールが採択され、「私たちは、2月22日 の大阪高等裁判所、 3月11日 の東京高等裁判所、そして来たるべき最高裁判所での勝利をめざし 、社会にはびこる優生思想や差別、偏見を根絶し、 共に生きる社会をつくっていきます。そのために、私たちは、今日の集会で確かめあった連帯を力に、これからも闘い続けます。最後に、市民のみなさんの優生保護法裁判への理解と支援を心から訴えます。」と呼びかけられました。

▽当日の集会録画(ユーチューブ視聴)と当日資料(グーグルドライブからダウンロード)は、期間限定で公開されます。

 こうした裁判の意義を理解し、国民的課題としていくための取り組みが急がれます。