大阪障害者センター 壁ニュース

優生保護法大阪控訴審勝訴判決を受けての緊急院内集会を開催!

「壁ニュース」テキスト版 2022/03/04

優生保護法大阪控訴審勝訴判決を受けての緊急院内集会を開催!
~上告は「人権侵害の上塗り」の声を広げよう!~

「優生保護法被害国家賠償請求訴訟大阪控訴審勝訴判決を受けての緊急院内集会」が3/4WEBで開催され全国から約400人を超える人たちが参加しましたました。

 この集会は、旧優生保護法のもとで強制的に不妊手術をされた原告が国を訴えた裁判で、2月22日、大阪高等裁判所は同法が憲法違反であると判断し、初めて国に賠償を求める判決を下しました。国は、判決から2週間以内に、判決を不服として最高裁判所に上告することができますが、私たちは、国に違憲判決を真摯に受け止め、上告を断念し、速やかに被害者への謝罪と補償をするよう求めます。
 大阪勝訴判決の意義を国会議員に直接伝え、上告断念と今後の全面解決を訴える場として、緊急院内集会が開催されたものです。

 主催は、優生手術被害者・家族の会、全国優生保護法被害弁護団、大阪優生保護法被害弁護団、優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会実行委員会です。

なお、国会では、2日、山井衆院議員(立憲)が大阪高裁判決の確定を厚労大臣に要望しています。

○開会あいさつ:全国弁護団新里弁護士
・この集会の意義は、呼びかけの通り、議員連盟の方々にも参加いただき、上告断念を!

○大阪弁護団:辻川弁護士
・大阪高裁:憲法違反であり、立法責任は明確。除斥期間は、認定するが、被告人の状況からいえば、著しく正義公正に
①半世紀にわたり、高齢化。一刻の猶予はない
②最高裁判決にも立脚した判決で、上告する理由はない
③今後二度とおこらないので、他の状況に大きな影響を与えるものではない
・上告することなく、一時金法を見直して、早急な対応を
・これ以上尊厳を凌駕することのないように

○明石市:泉市長
・画期的判決、誇りを取り戻す戦い。条例のタイトルは「尊厳の回復」こうしたことも含め

○国会議員への要望書の提出
【参加された議員からの声】
・社民党:福島議員
※参議院立法第一号で保護法が成立した責任は大きい
・除斥期間の適応はふさわしくないという判決の意義は大きい
・引き続き対応するが当面上告するなの声を
・立民党:岸議員
※地方公務員の出身だが、現場でこの法律に対応せざるを得ない状況もあったことを肝に銘じて対応していきたい
・自民党:川村元議員(尾辻)
※救済法のあり方をもう一度検討する必要がある。憲法下でこうした法律が残っていたことへの責任は大きい
・議員連盟への手渡し

・れいわ新選組:大石議員
※北さんの発言をきき、本当にみんなの力でここまで戦いを進めてきたことに、感動している。新選組としても障害当事者議員もおり、当事者が戦うことの意義は大きい、一緒に戦いを

・立民党:岡本議員・鎌田議員
※宮城県の出身で、今回の判決に共感している。一時金法にも努力してきたが、引き続きその改善も含め共同して戦っていきたい。
※新里弁護士は、共闘で市長も作ろうなどの取り組みをされてきた方。この人とともに、こうした戦いを、声を上げ続けることで、ひとつづつ変えていけるし、変えてきた。引き続き共同して行きたい。

・立民党:阿部議員
※小児科医でも母子保健法の対応等、生命の大切さを痛感している。上告されずに、解決を

・立民党:泉議員
※私が総理なら、上告はしない

・立民党:大河原議員
※高裁判決の意義は大きい。自分も車いすに乗ってそれだけで差別を感じる、そんな社会を変えていくために、社会正義を貫く司法もあるので、日本の暗黒史に残る、立法が人権侵害につながった歴史に終止符をうち、その重要性を痛感しながら、共同していきたい。人の生命、人権を守りとうしていくために、頑張っていきたい。

・共産党:高橋議員
※高裁判決は歴史的判決、上告をせずに、国会の責任が問われている。救済法の見直しも、頑張ったが、この法律が様々制約をつくってしまったことも事実で、その改善を進めたい。
飯塚さんに合うまで、その実態を知らなかったこともあるが、現在救済法の中でなにが頑張れなかったのかを総括し、その改善にも努力していきたい。

・れいわ新選組:木村議員(コメント)
※仲間の無念を思うと手放しでは喜べない。私の友人にもそうした友がいる。その人の無念を思うと早急にそうした思いを二度と繰り返さないためにともに取り組んでいきたい。

【原告・支援団体からの声】
○大阪ネットワーク(東さん)からのコメント
・判決勝利への感謝。生まれる一か月前にも手術が行われていた事実を知って、本当に他人事ではない。
・違憲を認めながら、除斥期間の壁、今回の判決はこの壁を突破し、司法が国をさばいてくれた。賠償もそうだが、何よりも真摯に国があやまってくれることを願う。上告などとんでもない。最高裁訴訟となれば、高齢化した人たちにはあまりに過酷なこととなる、絶対上告などしないでほしい。

○宮城原告:飯塚さん
※高裁判決は大きな励まし、20年間の戦い、原告は高齢化して来ており、一刻を争う状況。一刻も早い謝罪と補償を

○東京原告:北さん
※原告も亡くなる人が。一刻も早い解決を

○大阪原告:代読

○藤井JD代表挨拶
※打越、山井等の議員が質問、その回答は「反省します」とはいうが、実際には本当に反省しているのかわからない。判決は「六か月条項」などの新しい基準が提示されたが、これは分断にもつながる。一切の制限なしに対応すべき。一時金支給法は見舞金。これでは、補償とはならない。上告することは人権侵害の上塗り、絶対上告は許されない

○ろうあ連盟:大矢氏
※会員の中からその実態を集め、その内容を検討してきたその苦しさを共有してきた。この問題の解決とともに、様々な差別に対して引き続き大きな運動を展開していきたい。

○兵庫:藤原弁護士
※当事者だけでなく、多くの人々の願い、社会を変えて行く取組の重要性、個人の尊厳の尊重に侵害は許されないという戦い。日本を作り変えるためにも重要な裁判

○東京弁護団:関谷弁護士
※大阪高裁の変決勇気をもらている。上告断念して全面解決にもつながる。

※集会後、厚労省へ14377筆の署名の提出が行われました。

 この取り組みでは、議連を中心に、多くの議員さんたちも参加されました。しかし国会の総意としていく上では、引き続きさらに幅広い議員さんたちにもこうした思いや願い、意義を理解して行くことも求められるところです。
 ただこうした世論が国を動かしていくことにもつながりますので、地域でもこうした呼びかけや働きかけを広げていくことが緊急に求められています。
 上告の期限が近づく中で、こうした議員要請等とも並行して、上告断念への動きを急速に強めることと合わせて、この裁判が持つ意義について、改めて確認すること、「人権の尊重」「生命の保障」を進める施策や国の責任を明確にさせる意義を広くとらえ、他人事ではなく、広くそうした社会の実現を願う声を急速に広げていくことが求められます。
 新型コロナの蔓延で日常生活が尋常でない緊張感に包まれていますが、だからこそこうした問題に目をつむることは許されません。
 声をあげる方法は様々なやり方があります。
 様々な工夫をしながらも、ぜひとも大きな世論としていくことを目指す必要がありそうです。

 
この集会の呼びかけに当たって、JDの藤井克則代表のコラムが紹介されていますので、合わせてご紹介します。

【2022年2月24日東京新聞コラム「筆洗」から】

 ドイツのまちハダマーの施設ではナチス時代、多くの障害者が殺された。「秀でた者の遺伝子を保護し、劣る者のそれを排除する」という優生思想に基づく政策だった▼障害者団体幹部の藤井克徳氏の著書『わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想』によると、ガス室跡のある建物が保存されている。殺害された障害のある人は国全体で二十万人超ともいわれ、ユダヤ人大量虐殺より先に始まった。殺されなくとも、断種すなわち不妊手術を強いられた人も多かった▼断種には他国も手を染めたが、日本もその一つ。障害があり、不妊手術を強いられた人たちが起こした訴訟で先日、判決が言い渡された▼大阪高裁は手術強制の根拠となる旧優生保護法(一九四八〜九六年)を「極めて非人道的、差別的」と断罪し、違憲と判断。同様の訴訟で初めて国に賠償を命じた。一審は「手術から二十年過ぎ、賠償請求権は消滅した」と判断したが、高裁はこれを「著しく正義、公平の理念に反する」と覆した。司法の良心だろう▼非人道的な法が九〇年代まで存在したことにあらためて、暗然とした気分になる。相模原の施設で「重度障害者は不要」と男が凶行に及んだように、社会に差別感情は根強い▼ハダマーの施設の碑にはドイツ語でこう記される。「人間よ、人間を敬いなさい」。心に刻むべきはドイツ人に限らない。

 こうした思いをもっての呼びかけを真摯に受け止め広げていくことも大切な課題といえます。