大阪障害者センター 壁ニュース

65歳以上でも障害福祉サービスは使えます!~介護保険と障害福祉サービス学習会から~

「壁ニュース」テキスト版 2019/06/25

65歳以上でも障害福祉サービスは使えます!
~介護保険と障害福祉サービス学習会から~

 さる6/21、大阪では、大阪社保協・障連協・きょうされん大阪支部の共催で、「介護保険と障害福祉サービス」学習会が、開催され、障害当事者・介護保険及び障害福祉事業者・地域運動をしている人たちなど140名を超える参加がありました。
 学習会では、きょうされんの雨田さんから基調報告が行われ、障連協の塩見さんから「パンフ65歳を超えたあとも介護保険を申請しないという選択肢もあります」の提案が行われました。
 その後、岡山の浅田さん(私の生きる権利が認められてうれしい)等当事者からの思いを込めた発言が行われました。

【基調報告~】
○介護保険優先原則とは何か ~浅田訴訟高裁判決から学ぶ~
(1)介護保険優先原則とは何か
・自立支援法制定への流の中で
・自立支援法訴訟の提訴と基本合意
※国は、憲法に違反すると訴えた原告の思いを真摯に受けとめ、多大な混乱と悪影響を招き、人間の尊厳を深く傷つけたことに対し、心から反省の意を表明する。
※国は、現行の介護保険との統合を前提とせず、原告が指摘した自立支援法の「6つの問題点」を踏まえて、新法を検討・対応する。
※介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止し、障害の特性を配慮した選択制等の導入をはかること。
※第 七条 自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。
※自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について
・障害者が同様のサービスを希望する場合、心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこと
・介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるものは、障害福祉サービスを支給する。

(2)浅田訴訟の経過・争点
・岡山市は「介護給付費等不支給(却下)決定通知」を出し、誕生日前日よりこれまでのサービス(月249時間の重度訪問介護)をすべて打ち切り。
・人権を無視した制度移行の強制に強い憤りを持ち、2013年9月19日①決定の取消し②月249時間の介護給付費支給決定③損害賠償金209万4037円の支払いをもとめ提訴
(3)地裁・高裁判決内容
高裁判決(…2018年12月13日)
総合支援法第7条
○覊束処分ではなく裁量処分。
○障害福祉サービスを利用していた障害者が介護保険サービスの利用を申請した場合に生じうる二重給付を避けるための調整規定。介護保険制度に申請していない場合、この規定は採用されないこと。
(4)判決以降の動き・自治体間格差
※共生型サービス
※「高齢障害者の介護保険サービスの利用者負担軽減措置」
※運用面における自治体間の取扱いの格差
(5)今後の運動に向けて
●総合支援法は高齢期を迎えた障害者に充分対応できていない
●介護保険制度は高齢者の実態に充分対応できていない
●介護保険関係者と障害当事者・関係者との連携
●基礎自治体に対する運動
・取り扱いの徹底
・上乗せ基準の撤廃
・国への共同の要望(国庫負担基準の見直し等)
※社保協自治体キャラバンの要望項目

【リーフレット概要】※障害福祉サービスを使ってきたみなさん
65歳を超えたあとも
介護保険を申請しない
という選択肢もあります
介護保険を申請すると
○障害福祉サービスに相当する支援は介護保険が優先します
○介護保険サービス利用には1割の利用者負担が発生します
○使い慣れた障害福祉サービスが中断してしまう心配が生じます
○維持期の疾患別医療リハビリは介護保険サービスに切りかわります
※介護保険は申請することで制度サービスの利用がスタートします。この仕組みを「申請主義」※といいます。申請しなければ何もはじまりません。現在の障害福祉サービスの継続を希望する場合は「申請しない」という選択肢もあることを知ってください。
◆介護保険を申請すると次のサービスについて介護保険が優先されます
◆非課税世帯も介護保険利用には1割の自己負担が発生します
◆介護保険の申請後は65歳前のサービス利用の状態に戻すことはできなくなります
◆介護保険サービスが必要となったときに介護保険を申請することができます

Q 介護保険の申請をしたくありません。そのためにどのようなことをすればよいのでしょうか?
A 65歳の誕生日前に市町村から介護保険の申請関連書類が送付されてきます。そこに記載されている連絡先に「介護保険を申請しない」との意思を伝えましょう。
Q 申請をしない意思を伝えるために、どのような準備が必要ですか?
A なぜ申請したくないのかをきちんと説明できる材料をそろえましょう。①現在のサービスが継続できないとくらしが成り立たないこと、②介護保険の利用料負担ができないことなど、自分らしいくらしをこれまで通り続けていくために介護保険には移れないあなたの事情を具体的に説明しましょう。
Q 介護保険に移らないことで不利益を受けることはありませんか?
A 介護保険を申請しない障害者に対して障害福祉サービスを支給しないことを決定した事件(岡山市・浅田訴訟)では岡山市が全面敗訴しました。国も一律に介護保険を優先的に利用するものではないと通達しており、障害者が介護保険を申請しないことで一方的に不利益を押し付けることは、行政の裁量を逸脱した不法な行為です。また行政の不法行為を未然に防ぐためにも、申請を拒否する際には障害福祉の相談支援事業所や介護保険のケアマネージャーなどの関係者も含め、とりわけ行政担当窓口としっかり話しあっていくことが大切です。くらしの事情への理解を広げることが不利益処分を未然に防止する力にもなります。
※このリーフは、介護保険を運用しないことを干渉するためのものではありません。
 もちろん、地域の状況によっては事業者の状況等も含め介護保険の活用が必要な場合もあれば、特養等の活用で介護保険活用が必要な場合もあります。
 本来、どのような支援が必要であるのか、そのための制度活用の適性をしっかりと検討していくための一つの材料として、機械的な行政判断が行われない様実態を検討していくための制度理解のためのものです。しっかりとこうした運用上の考え方を理解した上で、適切な支援につながる様活用することと合わせ、今後の制度改善への理解を深めるためにも、自治体にも理解を求めるための資料として活用されることがのぞまれます。
※当該リーフレットは、障連協・きょうされん大阪支部までお問い合わせください。

 なお、当日の学習会での行動定期は以下のようなものでした。

【行動提起】
行動提起
1 リーフレットを活用し、浅田訴訟の到達点を学び広げましょう。そのために学習会を開きましょう。
2 各地域で関係者が連携し、各自治体対し、改善を働きかけましょう
 要求の例
①「浅田訴訟判決」(2018年12月13日広島高裁岡山支部、判決確定)を踏まえ、65歳に年齢到達された方を一律「介護保険優先」とする取り扱いを是正し、本人の意思でどちらを利用するかを選択できることを明確にすること。
②障害福祉サービスの給付決定を65歳年齢到達前までにする扱いや65歳以降は支給決定期間を短期間にするなどの不当な扱いを是正すること。
③介護保険サービスとの「併用」については、不当なローカルルールによる制限を付けないこと。
④65歳以上の方でも障害福祉サービスが利用できることを自治体として被保険者とケアマネジャー等関係者に周知徹底すること
⑤要介護認定の申請を行うかどうかは本人の選択と権利であり、障害福祉サービス利用者に要介護認定申請を強要しないこと。
3 当事者を孤立させず、支える取り組みを各地で共同して行いましょう。
大阪障害フォーラムが総会を開催!

 6/22大阪障害フォーラム(ODF)は、総会を開催し、来賓に大阪府障害福祉室長等が参加する中、2018年度活動報告・決算及び2019年度活動方針・予算が承認されました。 

【2019年度活動方針】
1.国連障害者権利条約にふさわしい国内法の整備をさらに図るために活動します。
○障害者制度改革推進会議が取りまとめた「骨格提言」の段階的実現をはじめとする障害者制度の拡充を図るため、日本障害フォーラム(JDF)と連携して活動を進めます。
○障害者差別解消法を踏まえ、障害者差別解消に向けた活動を進めます。
2.共通する課題を絞り込み、大阪府と懇談・交渉などを行い、施策の拡充を求めます。
○大阪府福祉医療費助成制度が障害児者・家族のくらしの実態に沿ったものとなるよう、幅広い団体などと共同し制度の拡充を求めて活動します。とりわけ老人医療費助成完全廃止の経過措置が切れる2020年度末までを活動の重点期間に位置づけて取り組みます。
○大阪府障害者差別解消条例の見直しにあたり、施行後の検証を行うとともに大阪府に対してその改善の課題等について、必要な提言等を行います。
3.大阪障害フォーラムに結集する団体相互の交流や意見交換を行います。
4.地域に根差した運動を進めるため、大阪府内各ブロックの活動の活性化を図ります。5.日本障害フォーラム(JDF)や他県の地域障害フォーラムなどとの共同・連携を図ります。
6.行政や公共交通事業者等と連携して、障害者の交通・情報アクセス問題について継続した取り組みを進めます。
7.その他
○参加団体のご意見などをもとに、様々なテーマで学習会を開催します。
○世話人会・事務局会議を定期的に開催します。
○大阪障害フォーラムのホームページを充実し情報発信に努めます。

 さらなる共同の取り組みに期待が高まっています。