大阪障害者センター 壁ニュース

新たな情勢下、表面化し始めた社会問題に注目を!

「壁ニュース」テキスト版 2020/01/31

新たな情勢下、表面化し始めた社会問題に注目を!
~二つの政治連盟が始動か?~

 障害者の家屋内での閉じ込め死亡事件(寝屋川事件)・引きこもり家庭での家族介護の破綻からの社会的問題行動への転嫁・老老介護、逆老々介護での心中事件(昨年12月に福岡市にある「サービス付き高齢者向け住宅」に入居していた88歳母親と70歳娘が無理心中した記事が紹介されました。70歳の娘が要介護5で、主たる介護者は88歳の母親であった。そして、母親は経済的に苦しくなってきていることを職員に漏らしていたらしい。)・障害者のロングショートや虐待事件等々、現在社会問題として日々頻発する様々深刻な実態が表面化し始めています。
 こうした社会問題がなぜ次々発生していくのか、なぜこうした問題に対して政治や行政は何も行うことなく平然とその対応を放棄できるのかを真剣に考える時期が迫っている。
この間の、日本の社会保障制度は、国民皆年金・皆保険制度を中心として、憲法第25条を基本として様々と改善されてきた。しかし、95年勧告以降、基本的な制度改革が財政問題を中心として「基礎構造改革」の名のもとに急激に進められてきた。その中心は公的責任から家族・自己責任論への転換をベースとして、行政や福祉そのものが市場化され権利保障からサービスへと転換することによって大きな転換が進められることとなっっています。
 その流れは、基本的に「社会保障制度改革推進法」を基本として、「自助・(互助)・共助・公助」のバランスをたもちながらとはいえ、基本的なスタンスは、自己責任論と保険主義とともに、「我がこと・まるごと」で地域住民人その対応を転嫁し、さらに福祉サービスの市場化を前提としたものであった。さらにその動きを加速する「全世代型社会保障制度」改革としてますます加速されようとしています。
 実際に様々な事件が発生した際、自治体とくに児相や更生相談所等の責任が追及され鵜場合もあるが、実際の自治体等の責任を追及する声は極めて少ないのが実態です。

注目の「やまゆり園事件」の公判がスタート

 あの悲惨な事件となった「やまゆり園事件」の植松聖(さとし)被告(29)=殺人罪などで起訴=の裁判員裁判は、1/8からスタートしていますが、横浜地裁は、公判期日が予備日を含め27回に及び、判決の言い渡しを3月16日午後1時半から始めると発表しています。
 公判の内容等は、各マスコミ等でも詳細が報道されていますが、今回のこの事件、被告の取った行動の残虐性はもちろんのこと、その背景となった、障害者に対する「優生思想」(ヘイトクライム)や入所施設政策の在り方などもしっかりと検証される必要があります。
 神奈川県はすでに、昨年11/25「津久井やまゆり園事件検証報告書」を提出していますが、その後、神奈川県知事が、2024年度まで園の指定管理者を社会福祉法人「かながわ共同会」とする従来の方針を撤回するなどしていますが、同会の利用者支援の不備を指摘、報道では、「虐待の疑いのある身体拘束が25人であったことが県の調査で判明した」として検証委員会等が再度検証を行う事態なども並行して行われています。
 様々な意味でこうした動向に対してもしっかりと注目しておく必要があります。
 
全世代型社会保障制度の流れをどう見るか

 一方、昨年末に取りまとめられた「全世代型社会保障制度」について、「きょうされん」からもその評価表明等が行われていますが、日本障害者センターの山崎氏等もその分析を行い、公表しています。
 その概要は、○働ける人は働かせることが「全世代型」の狙い○働くことが困難な人たちへの直接支援は「地域共生社会」という位置づけで、基本は社会保障支出の削減と福祉等の市場化による「企業が活躍しやすい国づくり」が最大の狙いです。まさに障害者のみならず、国民全体の暮らしの安全をどうしていくのか本当に全国民的課題が提起されており、しっかりとその狙いや今後の施策の動向に広く注目しておくことが重要となります。(別図に日本障害者センターの山崎氏作成の表をご紹介しておきます。)

 二つの議員連盟の動きにも注目を

 福祉新聞等での報道から、以下のような銀連盟等が動き出すようです。

■自民党の「知的障がい者の明日を考える議員連盟」
 昨年10月に党内の勉強会で議連発足が決まり、冒頭で木村会長は「障害者の最大の課題は所得保障だ。今の障害年金の水準ではやっていけない。しっかり議論していきたい」とあいさつ、住まいの問題については「それぞれ家庭の事情もあり、全て在宅で、というのは無理だ」とし、施設経営の足かせとなるような法制度を改める意向を示していました。同日の会議には入所施設やグループホームを運営する社会福祉法人柊の郷(千葉県)の足高慶宣理事長ら、約40の福祉施設の幹部が参加。11/21の第五回総会で、新会長には野田聖子氏が選出されています。事務局長は三原じゅん子氏、議連の顧問には木村義雄・高村正彦・前同党副総裁らが就く予定です。

■福祉の国家資格を持つ人材の処遇改善や任用拡大を進める、超党派の議員連盟 

 もう一つは、昨年2月に発表された、福祉の国家資格を持つ人材の処遇改善や任用拡大を進める、超党派の議員連盟です。ただこの議員連盟は、「政府が提唱する地域共生社会を実現するため、福祉専門職としての社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の社会的な評価を高めていく。」ことを目標としています。この連盟は、ソーシャルケアサービス研究協議会(白澤政和代表)等が中心で呼びかけを行うなど、国家資格を持つ人の職能団体や養成団体など福祉関係15団体が加盟するソーシャルケアサービス従事者研究協議会は、政策提言するなど、福祉人材問題の抜本的解消となるかはまだまだ、疑問符が持たれています。

 いずれにせよ、こうした動きが与党内でも起こるなど、徐々に社会問題としての広がりを見せてきていることは、一歩前進と言えますが、こうした議連等も含め、適切で大きな世論としていくための工夫も大きな課題といえます。

増え続ける障害者虐待
 
 厚生労働省は昨年12月20日、全国の自治体などが認定した2018年度の障害者虐待は2745件(前年度比127件増)に上り、過去最多を更新したと発表しました。虐待の加害者別にみると、父母、夫ら家族による虐待が1612件(同55件増)と全体の6割近くを占め、最も多かった。また、グループホームやデイサービスなど福祉施設の職員による虐待が592件に上り、前年度(464件)に比べ大きく増加。障害者グループホームの世話人と、短期入所(ショートステイ)のサービス管理責任者による虐待で2人が死亡しています。施設職員に関する虐待通報は約2600件で、このうち3割が施設の管理者や職員からの通報だった。同省は「虐待を隠さず、相談や通報をする施設が増えてきている」と分析しています。

 様々な動きがある中で、こうした虐待の増加に対して緊急な対応をすすめることが大きな課題となっているといえます。
 ただ、一方で、こうした社会問題がなぜ次々発生していくのか、なぜこうした問題に対して政治や行政は何も行うことなく平然とその対応を放棄できるのかを真剣に考える時期が迫っているといえます。