大阪障害者センター 壁ニュース

WHOが障害者家庭への注意を喚起!~新型コロナウィルス対策~

「壁ニュース」テキスト版 2020/04/07

新型コロナウィルス対策は急務!
~WHOが障害者家庭への注意を喚起!~

 現在、新型コロナウィルスの感染拡大は、かなり深刻な状況となっています。
 現在、今日明日にも国は「緊急事態宣言」が行われる可能性も高まっています。
 特に、東京・大阪・兵庫等は、こうした宣言が出れば、新たな対応を図る可能性も高まっています。
 こんな中、3/26にWHOが出した「COVID-19急増下での障害への配慮」というパンフの仮訳がJD等から紹介されています。
 かなり具体的な留意点等が記載されていますので、ご紹介します。

【WHO COVID-19急増下での障害への配慮】
○COVID-19の急増時に、なぜ障害のある人に追加の配慮が必要なのでしょうか?
 新型コロナウィルス急増中も含めて、障害のある人が必要とする保健ケアサービスや公衆衛生情報に常にアクセスできるようにするために、取り組みを起こす必要があります。障害のある人は、以下の理由から新型コロナに感染するリスクが高くなる可能性があります。
・手洗いなどの基本的な衛生対策を実施することへの障壁(例えば、手洗い器や流しに物理的にアクセスできない場合や、手を完全にこすり合わせることが身体的に困難な場合など)、
・追加の支援が必要なため、または施設に入所しているため、社会的な距離を置くことが困難、
・環境から情報を得るため、または体を支えるために物に触れる必要がある、
・公衆衛生情報にアクセスすることへの障壁。
 基礎となる健康状態によりますが、障害のある人が感染すると、新型コロナがより重症化するリスクが高くなります。これは以下のような理由によるものです。
・新型コロナが既存の健康状態、特に呼吸器機能、免疫系機能、心臓病、糖尿病に関連した健康状態を悪化させる。
・医療へのアクセスの障壁。
 また障害のある人は、頼っているサービスの深刻な中断により、感染急増の影響を極端に強く受ける可能性があります。
 障害のある人が経験する障壁は、主要な関係者が適切な行動を取れば軽減することができます。

○障害のある人とその家族の取り組み
◇あなたが新型コロナウィルスに触れる可能性を減らす
 すべての障害のある人とその家族は、新型コロナ急増時には基本的な保護対策に関するWHOのガイダンス に従うべきです。これらの基本的な保護対策に従うことが困難な場合(例えば、定期的に手を洗うために手洗い器や流しにアクセスできないなど)は、家族や友人、介護者と協力して対応策を見つけてください。さらに、
・混雑した環境をできるだけ避け、他の人との身体的接触を最小限にする。必要な訪問をピーク時以外に行うことを検討します。障害のある人向けの特別営業時間が設けられている場合は、それを利用します。  
・オンラインで買い物をするか、家族、友人、介護者に援助を依頼して、混雑した環境での買い物を避けます。
・公共の場所に出入りする頻度を減らすために、食料品、清掃用品、医薬品や医療用具など、緊急に必要なものを集めておくことを検討してください。
・とくに混雑環境での典型的な就労をしている場合、可能なら自宅で仕事をしてください。・補助器具を使用している場合は、頻繁に消毒してください。これには車椅子、杖、歩行器、移乗用ボード、白杖、または公共の場で頻繁に扱われ使われるその他の製品が含まれます。必要な介護や支援を継続して受けられるよう計画を立てる
・介護者に頼っている場合は、一人または複数の介護者が、体調を崩したり自身の隔離が必要となる場合に備えて、呼べる介護者の数を増やすことを検討しましょう。
・あなたが事業所を介して介護者を調整している場合は、起こりえる職員不足を補うために事業所が持っている不測事態の対応計画を確認しましょう。あなたは家族や友人と、家族や友人がどんな追加的な支援を提供できるか、どのような事態の時に家族や友人を呼ぶ必要が出てくるか、話したいと思うかもしれません。
・助けが必要な場合にアクセスできる、あなたの地域社会の関係組織を確認します。

◇新型コロナに感染した場合に備えて、家庭の準備をする
・信頼している友人や家族を含め、家庭の中にいる人たちが、あなたが病気になった場合に必要となる重要な情報を知っていることを確認します。これには、あなたの健康保険、薬、被扶養者(子ども、高齢の親、ペット)の世話の必要性に関する情報が含まれます。
・あなたが新型コロナに感染したり、援助が必要になった場合に何をすべきか、家族全員が知っていることを確認します。
・あなたが病気となった場合に効果的に連絡が取れるように、あなたの支援ネットワークの人々を家族に紹介しましょう(もしまだつながっていない場合)。
・質問が出てきたり、緊急ではない医療支援が必要な場合に備えて、関連するテレ医療 サービスやホットラインの電話番号を知っておきます。

◇家族員と介護者の精神的・身体的健康
 WHOのガイダンス新型コロナの急増下での精神的健康への配慮 と、既存の非感染症の管理に関するガイダンス(近日公開予定)に従ってください。
 世帯内にウイルスの症状がある人がいたら、その人を隔離してマスクを着用させ、できるだけ早く検査を受けるように指示する必要があります。すべての表面を消毒する必要があり、家庭内の全員の症状を監視する必要があります。可能であれば、基礎的な健康問題や免疫力低下のある人は、隔離期間の終了まで別の場所に移動させる必要があります。

○政府の取り組み

◎公衆衛生情報とコミュニケーションをアクセスしやすいようにする
◎障害のある人とその支援ネットワークを対象とした措置に取り組む
◎障害サービス提供者を対象とした措置の実施
・障害サービスが、政府と連絡を取り懸念を提起するために、ホットラインを提供します。
・マスク、エプロン、手袋、手指消毒器などの個人用保護具を無料で利用できるように、障害者介護機関を優先的に取り扱います。
◎医療従事者の取り組み
◎障害のある人のためのテレ医療の提供

○障害サービス事業者の取り組み

◎サービス継続計画の策定と実施
・職員数が減少する場合に対して計画を立て、適切な場合には介護者だけでなく、管理部門や技術スタッフの規模を拡大するための取り組みを明確にします。
・介護者のための警察チェックなどの保護措置を維持しつつ、官僚的な採用障壁を減らすための行動を特定し、政府と協力します。
・追加の訓練を実施し、できれば、新しい労働力および拡大された役割を担う人々を準備するためにオンラインのカリキュラムを開発します。
・地域の障害のある人および介護者の他の機関と協力して、最も切実に必要とされる障害サービスおよびサービスの維持が不可欠なものの優先順位付けを行います。サービスの減少に対して最も脆弱な利用者を特定します。
◎障害のある人およびその支援ネットワークと頻繁にコミュニケーションをとる
・障害のある人およびその支援ネットワークにとって重要な、新型コロナに焦点を当てた追加情報を提供します。これには、事業継続計画に関する情報、テレ医療やホットラインの電話番号、アクセスしやすい医療サービスの場所、手指消毒器や消毒器具が不足している場合に入手できる場所、そして自身の隔離が必要な場合に利用できる場所などが含まれます。
・電話、テキスト、ソーシャルメディアなどの様々なコミュニケーション手段を利用して情報を共有し、必要に応じて既存の情報をアクセシブルな形式に変換します。
◎障害サービスの提供中の新型コロナへの曝露の可能性を減らす
・研修を提供し、迅速に障害者ケア職員の感染管理能力を高めます。
・障害のある人の介護者およびサービス提供者が、マスク、手袋および手指消毒剤を含む個人用保護具を利用できるようにします。これらの製品の注文の増加を考慮します。
・在宅ベースの相談を通じて、またはテレ医療と同様の手段を通じて、適切な障害サービスを提供します。
・居住施設では、以下を検討します。
※入所者の精神保健への影響の可能性を考慮しつつ、職員がより効果的に監視・清掃できるよう面会時間をずらすなど、感染リスクを軽減するために面会時間を変更します。
※体調不良で入院していない入居者に対して、マスク着用や制限室での待機を助言するとともに、面会を制限するなどの隔離・感染対策を追加で実施します。
◎複雑なニーズを持つ障害のある人に十分な支援を提供する
・より複雑なニーズを持つ障害のある人を特定し、彼ら、その家族、地域支援機関と協力して、介護者の不足や不在の場合に備えて、不測の事態の対応を確認します。
・社会的孤立や日常生活への支障から、障害のある人に対する暴力、虐待、ネグレクトが増加する可能性を確認します。アクセスしやすいホットラインの開設などにより、これらのリスクの緩和を図る。

○地域社会の取り組み

◎一般市民が採用すべき基本的な保護措置
◎雇用主が支援すべき柔軟な勤務体制と感染予防
 WHOのガイダンスに備える職場の準備 に従いましょう。
・可能であれば、障害のある人がテレワークできるような柔軟な勤務体制を導入します。職場で一般的に使用されている支援機器を含め、必要な機器を確実に使用できるようにします。
・テレワークが不可能な場合は、重い症状のリスクが高い障害のある人が、感染のリスクが軽減されるまで休暇(有給休暇を含む)を取得できるようにすることを検討します。これらの対策を実施できるよう、政府の政策や雇用者が利用可能な支援を検討します。
・手指消毒台などの職場感染対策のアクセスを確保します。
◎店舗所有者による、脆弱な人々の店舗へのアクセスの改善
・障害のある人やその他の潜在的に脆弱な人々が店舗にアクセスできるように時間を割り当てることを検討します。あるいは障害のある人が買い物することができるよう代わりの方法(配達、オンラインなど)を検討します。
◎障害のある人のために家族、友人、近所の人が提供すべき追加サポート
・社会的距離の制限を尊重しながら、障害のある人と定期的に連絡を取り合い、情緒的および実用的な支援を提供します。
・新型コロナについての話し方に注意し、既存のストレスを悪化させないようにします。

  (仮訳:佐藤久夫)
※全文等は事務局まで

山本氏からのメッセージ

 また、当センターにもかかわりの深い、山本耕平先生のフェイスブックへの投稿も紹介しておきます。

『緊急事態宣言が近くなってきたと報道されています。
 障害者福祉の法人を運営するものとしていくつかの思いがあります。
一つは,こうした宣言がでますと,少なくないなかま達の不安が高まります。
 なかでも,精神障害のなかま達は,パニックになる人もいるかもしれません。この点は,現場での濃厚な支援を必要としてきます。
 国は,その必要とする濃厚なニーズへの対応に特別の配慮を行うべきです。危機的な状況が生じた時,障害者福祉の現場の実践者はより濃厚な実践を行う必要があるのです。
二つ目には,作業所に毎日通うことが楽しみななかま達の行動になんらかの制限が生じた時,彼や彼女たちの日常生活をどう保障するかです。
 彼や彼女たちは,作業所に来てなかまや職員と触れ合うことで充実した生活を送っています。その充実した生活はテレワークでは保障されません。
 場合によっては,訪問による指導が必要となるかもしれません。
 国は,そこで生じる作業所閉鎖中の収入減や必要となった個別の支援に対する財政的な保障を行うべきでしょう。
三つ目に,やはり,対人援助の職場ですから,多くの他の人と関わり,職員が感染する可能性があります。
 私たちは,職員の健康を守る責任があります。職員が感染する可能性をどれだけ弱めるかを真摯に考える必要があります。
 ただ,この対人援助の職場は,ほとんどテレワーク等では実践不可能な職場です。今,医療職の感染や疲弊が問題になっていますが,これは,対人援助の職場すべてに共通する課題です。
四つ目に,差別や偏見との関わりです。感染者は,特別な人ではありません。明日,私たちが感染する可能性もあります。
 感染者に対する差別や偏見,これは,HIVパニックの時もそうでした。さらに,ハンセンにも共通することです。私たちは,誤った考えに支配されない賢い人間になる必要があるのではないでしょうか。
 最後に,私たちは,今,多くの自己努力を強いられています。この事態で生じる収入減にまで自己努力が強いられてはなりません。また,各自治体は,画一的な制限を避けて欲しいものです。』(4/6山本氏のフェイスブック投稿より)

 「緊急事態宣言」が今後具体的にどのような障害者・家族への影響が引き起こされるのか、また福祉事業への影響はどうなるのか、しっかりと実態を踏まえた総合的な施策の展開の中で、対策が進められるためにも、各現場からの課題の発信等が急務となっているとともに、当事者・家族への適切な情報提供が求められます。