大阪障害者センター 壁ニュース

緊急事態宣言延長にどう対処するか! 野党が「社会福祉関連3法案」審議入り

「壁ニュース」テキスト版 2020/05/18

新型コロナ対策「緊急事態宣言」延長にどう対処するか!
野党が「社会福祉関連3法案」審議入り~

 5/8立憲民主党や国民民主党・日本共産党などの野党共同会派が提出した「社会福祉関連3法案」が、5/12衆議院で審議入りしました。
 この法案は、今回与党が提案した「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」に加えて、野党共同で提案されたものです。これまで、医療現場や介護・福祉現場が今回の事態の中で、崩壊の危機を迎える中で、医療現場への対策や、介護(危険手当)・福祉現場への対応が後手に回る中実際は、当事者・家族が本当に深刻な事態となっていることも踏まえ、各種改善策に加え、あらためて緊急対策として提案されたものです。
 この法案の概要は以下のようなものです。

【政府提出の「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」(3/6提案)】
1.地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援【社会福祉法、介護保険法】
2.地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進 【介護保険法、老人福祉法】
3.医療・介護のデータ基盤の整備の推進 【介護保険法、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律】
4.介護人材確保及び業務効率化の取組の強化 【介護保険法、老人福祉法、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律】
5.社会福祉連携推進法人制度の創設 【社会福祉法】

【社会福祉関連3法案】
◇介護・障害福祉従事者処遇改善法案
※新型コロナ対策に必死で取り組む職員の低い賃金を少しでも引き上げてほしい
○ケアマネの事業所を含む全ての介護・福祉職員賃金を1人月額1万円を引き上げるとともに、職場でのセクハラ・パワハラの防止を徹底。施行日は公布から1か月後
◇重度訪問介護就労支援法案
※重度訪問介護の就労中の利用を認める
○重度訪問介護の通勤や職場でのサービス利用を可能とする
◇食事加算等存続法案
○障害者または障害児への食事提供および送迎に要する費用額の算定に係る加算について、障害者児に不利益な内容を定めてはならない

 現在、社会福祉法等の改定審議に合わせての議論となりますが、新型コロナ蔓延の中で、
今人うような法改正や介護・福祉事業への支援内容こそが緊急に議論されるべきであり、情勢に見合った施策検討が緊急に行われるよう、現場からの声を大きく反映させていく必要がありそうです。
 JD(日本障害者協議会)からの緊急要望についても、一般施策上の回答しかない、厚労省の対応では、真にこうした自他の中でどのような施策が求められるのか、当事者からの要望のみならず、国会での大きな議論が緊急に行われる中で、緊急対策を講じていくことが、今こそ求められる時といえます。

 なお、この間、各政党からも、新型コロナ対策への要望等が国会審議の中等でも行われていますが、JDに紹介された、4/20に立憲民主党の「障がい者・難病PT」が取りまとめた、政府への「要望」内容を紹介しておきます。

【障がい者・難病患者当事者の声を反映させた新型コロナウイルス対策を求めます】2020年4月20日:立憲民主党障がい者・難病PT(座長: 山花 郁夫・事務局長: 早稲田 夕季)

○要望項目
1.政府や自治体、各報道機関・メディア(ネットを含む)において、情報アクセシビリティの確保と徹底(手話、字幕、点字印刷、音声対応、知的障害者などにも分かりやすい形の情報提供)を行うこと。

2.聴覚障がい者の適切な受診機会の確保と、手話通訳者の感染を防止するため遠隔手話通訳システムの構築を急ぐこと。

3.運営法人の感染予防や感染拡大防止の努力にもかかわらず、障がい者の入所施設やグループホームにおいて集団感染が起きてしまった時に、運営法人や当該市町村、都道府県だけでは対応できない事態に備えて、他の法人や自治体等から、障がいの特性や施設運営に知見や経験のある外部専門家による人的支援が、すみやかに行われる体制の構築を検討するとともに、都道府県と市区町村間の情報共有と連携が円滑に行われるよう、国としても積極的に関与すること。

4.障害福祉事業の利用者や職員に感染者が出た場合、集団感染の発生防止の観点から、都道府県の用意する一時滞在施設での優先的な取り扱いを検討するよう助言するとともに、施設内での感染者の隔離がしっかりと行えるよう施設整備、改修費について支援を行うこと。

5.今回の「北総育成園」の現場実態を共有し、厚生労働大臣からのメッセージとともに発信して、差別や誹謗中傷を減らすとともに、その記録を今後の施策に反映すること。

6.障害福祉事業の利用者や職員に濃厚接触者が出た場合、PCR検査へ確実につなげるための対応指針を早急に示すとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大による報酬の大幅減少を防ぐための特別な措置や柔軟な運用について地域格差をなくすよう、また障がい者・難病患者とその介助者にPCR検査を優先的に受けさせることを検討することを自治体に助言すること。

7.家族の介護負担を考慮し、障害福祉事業所等へ一律に休業要請はせず、個別の判断と対応に対して、必要な量のマスクや消毒液を供給するなど自治体と連携して支援を行うこと。

8.入所施設及びグループホームの利用者が感染した場合、障がいのない人と同等にすみやかに入院できるよう体制を確保することとともに、利用者が一時帰宅した場合にはすみやかに訪問系サービスを利用できるようにすること。

9.ヘルパーによる介助サービスを受けている障がい者や難病患者に、発熱あるいは風邪の症状があることを理由にして、サービス利用者との協議なしに一方的にヘルパーの派遣を中止することのないよう、ヘルパー派遣事業者に助言を行うこと。

10.感染拡大防止の観点から訪問系サービスを中止せざるを得ない場合は、生活に不可欠な支援が届かなくなることのないよう、事業所との事前協議を自治体に助言すること。

11.障害福祉事業所、精神科病棟、障がいや難病を理由に人工呼吸器など医療的ケアを必要としている児童、成人の在宅療養現場に、防護服、消毒用アルコール、マスク、ガーゼ等、感染予防に不可欠な装備や備品が優先的に提供されるよう、国として必要な措置を講じるとともに、自治体に助言すること。

12.買上げを含む人工呼吸器の増産と、必要な医療機関への配備、集中治療室の増設や人工呼吸器を取り扱える者の増員を図り、障がいを理由とした命の選別を行わないこと。

13.在宅勤務切替えのための就労中の重度訪問介護サービス利用及び支給量の一時的増加のすみやかな容認、重度訪問介護従事者研修・医療ケア3号研修などの受講要件の緩和、訪問サービスに代わる電話による相談、助言の報酬対象化等、障害福祉サービス継続のための柔軟な対応と措置を行うとともに、こと。

14.市町村事業である地域活動支援センターについても、報酬の取り扱いやマスク等の配布等の面で、他の障害福祉事業所と同等の扱いとなるよう国として必要な措置を講じるとともに、市町村に助言すること。

15.精神科病棟において感染のリスクが高くなった場合、本人の意志に反してそこに留められること等のないよう転院・退院の相談体制を設けるなど精神障がいのある人の人権を尊重するとともに、検査などの情報へのアクセス感染した場合の医療の提供などにおいて、精神障がいのある人が差別されないようにすること。

16.外出自粛や特別給付金の支給にあたって、同居している障がい児者に対する暴力や虐待(金銭的虐待を含む)が増えないよう、暴力や虐待を防止するための相談体制の充実や虐待が疑われる養護者へすみやかな介入のために、自治体と児相、NPOなどが連携を図るよう支援を行うこと。

17.感染者の医療、看護、介護にあたる人々にPTSDに近い症状が報告されていることを踏まえ、心のケア等、適切な労務管理の充実を図ること。

18.障がい者や難病患者の当事者家族団体や支援団体、障害福祉事業所等のNPO法人の事業報告書等の提出期限の延期や今後、寄附金が極端に落ち込んだ際の緊急的な財政支援の方策について、検討を行うこと。

        以上

業種別感染拡大予防ガイドラインとは

 なお、今回、緊急事態宣言の一部解除に当たって、政府は、81の業種別団体から各事業にあった、感染拡大予防のためのガイドラインの作成とその徹底を呼びかけています。ただそのガイドライン作成に当たっての基本的なポイントは、専門家会議から5/4にも示されていますのでご紹介しておきます。官邸HPに紹介とともに、大阪府等でも策定の予定です。

【感染拡大予防対策のポイント】
 新型コロナウイルスは「接触」と「飛まつによる感染」が主な感染経路だとして、
▽接触する頻度が高い、ドアノブ、電気のスイッチ、エレベーターのボタンなどには特に注意し、
▽飛まつ感染については、換気の状況を考慮しつつ、人と人との距離をどの程度維持できるかなどを見て感染のリスクを評価するとしています。

○各業種に共通する注意点として、
▽密にならないよう施設や店などへの入場者の数を制限すること、
▽発熱などの症状がある人は入場制限すること、
▽消毒設備を設置しマスクをつけること、
▽施設の換気や消毒を行うこと、などを挙げています。

○感染対策の例として、
▽複数の人の手が触れる場所を適宜消毒すること、
▽人と人が対面する場所は透明なカーテンなどで覆うこと、
▽美容院、理容店、マッサージ店など客の体に触れる場合は手洗いをよりこまめに行うこと、などとしています。

○トイレや休憩スペースでは感染のリスクが比較的高いと考えられるとして、
▽トイレではふたを閉めてから流すよう表示すること、
▽ハンドドライヤーや共通のタオルの使用をやめること、
▽休憩スペースでは、一度に休憩する人数を減らし、対面で食事や会話をせず、常に換気し、部屋に入る時と出る時に手洗いをすること、などを求めています。
○その他
▽ごみを回収するときはマスクや手袋をつけて、外したあとは手を洗うこと、
▽高齢者や持病のある人に関わる事業所では感染した場合に重症化するリスクが高いため、サービスを提供する側はより慎重で徹底した対応をとること、などを示しています。

さらに留意していくべき課題は?

 なお、今般まだまだ予測しにくい事態の下で、課題が山積していますが、今後緊急にその対策の検討の必要な課題等についても緊急に要請、検討しておく必要があります。
○自粛要請等に係るメンタルヘルスケア対策
※先般、センターメンタル研のパンフ等も紹介しましたが、行政等でもやっとこうした対策や相談先の設定等が開始されています。
○もう一つか、「避難所開設時の感染予防対策」です。
 すでに、この間も地震の発生や台風1号の発生等、梅雨入りを控え、自然災害も予想される季節となりました。
 この間、こうした大災害時の避難所問題等は、繰り返し要望してきていますが、今後講師避難所の開設(福祉避難所含む)に当たっても、緊急にこうした感染予防対策の検討と対処が求められることとなります。
 一部報道でもこうした問題について取り上げられrていますが、以下のような提案等も行われており、障害者団体とうでもこうした課題について検討・要望を進めていくことも求められます。
 こうした資料については、以下の提起なども参考にして下さい。

【避難所開設での感染を防ぐための事前準備チェックリスト Ver.2-手引き版
2020年4月30日
人と防災未来センター 研究員 髙岡誠子】

 あわてることなく、十分な対応を先行して行えるよう様々な取り組みが求められています。