大阪障害者センター 壁ニュース

新型コロナ対策のなか、諸法の改定動向にも注目を!

「壁ニュース」テキスト版 2020/05/29

新型コロナ対策のなか、諸法の改定動向にも注目を!
年金制度改正法案や社会福祉改正法案等の成立への動きは?

 新型コロナの「緊急事態宣言」解除が出される中、地方ではすでに第二派の予測もあり、引き続きその対策が急がれるときではありますが、こんな中、コロナ対策が急がれる中でも、国会では様々な思惑をもった法案審議が進められています。
 多くの世論が批判した「検察庁法改正案(検察官の定年延長)を可能にするこの法案は、国家公務員法改正案とともに国会に提出されたが、急転直下、今の国会での成立が見送られました。
 しかしそれ以外でも、今後の生活に影響する様々な法案が審議、可決されていることに対してしっかりと注目をしておく必要があります。

【今国会(201回)での成立法案等】
○ 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案
※バリアフリーに関する法案の一部改正

○社会福祉法等の改正案「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」(以下、政府社会福祉法案)
◇概要
1.地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援
2.地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進
①認知症施策の地域社会における総合的な推進に向けた国及び 地方公共団体の 努力義務を規定する。
②市町村の地域支援事業における関連データの活用の努力義務を規定する。
③介護保険事業(支援) 計画の作成にあたり、当該 市町村の人口構造の変化の見通しの 勘案、高齢者向け住まい(有料老人ホーム ・サービス付き高齢者向け 住宅)の 設置 状況の記載事項への追加、 有料老人ホームの設置状況に係る都道府県・市町村間の情報 連携の強化を行う。
3.医療・介護のデータ基盤の整備の推進
①介護保険レセプト等情報・要介護認定情報に加え、厚生労働大臣は、高齢者の状態や提供される介護サービスの内容の情報、地域支援事業の情報の提供を求めることができると規定する。
②医療保険レセプト情報等のデータベースや介護保険レセプト情報等のデータベース等の医療・介護情報の連結精度向上のため、社会保険診療報酬支払基金等が被保険者番号の履歴を活用し、正確な連結に必要な情報を安全性を担保しつつ提供することができることとする。
③社会保険診療報酬支払基金の医療機関等情報化補助業務に、当分の間、医療機関等が行うオンライン資格確認の実施に必要な物品の調達・ 提供の業務を追加する。
4.介護人材確保及び業務効率化の取組の
強化
①介護保険事業(支援)計画の記載事項として、介護人材確保及び業務効率化の取組を追加する。
②有料老人ホームの設置等に係る届出事項の簡素化を図るための見直しを行う。
③介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに 係る現行5年間の経過措置を、さらに5年間延長 する。
5.社会福祉連携推進法人制度の創設
社会福祉事業に取り組む社会福祉法人やNPO法人等を社員として、相互の業務連携を推進する社会福祉連携推進法人制度を創設する。
※5月26日に衆院本会議で可決
◆今回のコロナ対策の影響で、事業所運営や人材確保の困難性が急浮上し、公衆衛生や医療体制の不安定さがその対策の困難性を浮き彫りにする中で、改めて、こうした制度の根本的なあり方が問われています。
 しかし政府や厚労省は、2000年以来の「自己責任」路線を転換したわけではない。国家責任を後退させる方向性、公共部門を私企業に担わせる方向性、福祉と社会保障を縮小する方向性は、依然として維持されており、政府が「地域共生社会」という用語を使用する場合、「国はカネを出すのをやめる。クチは出すかもしれないが」というニュアンスを読み取る必要があります。
 結局こうした政策のつけが、今回の対策でも深刻な事態を招いた中で、なぜこの時期にこの法案のみを可決するのか、どさくさ紛れの感はいがめないところです。

○野党が提出した障害福祉に関する法案(以下、障害福祉3法案)
※いまだ衆院厚労委員会での審議も開始されておらず、今国会の期限切れとともに廃案となる可能性もある。

○年金制度改正法案
◇概要
1被用者保険の適用 拡大
①短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について 、 段階的に引き下げる現行500人超100人超50人超 。
②5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士 、 税理士等の資格 を有する者が 行う法律 又は会計に係る業務を行う事業 を追加する 。
③厚生年金 ・ 健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間 労働者に対して 、公務員共済の短期給付を適用する 。
2在職中の年金受給の在り方の見直し
①高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため 、在職中の老齢厚生年金受給者65歳以上の年金額を毎年定時に改定することとする 。
②60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について 、支給停止とならない範囲を拡大する 支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を 、現行の28万円から47万円令和2年度額に引き上げる 。
3受給開始時期の選択肢の拡大
 現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を 、60歳から75歳の間に拡大する 。
4確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
①確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げるとともに 、受給開始時期等の選択肢を拡大する 。
②確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大100人以下300人以下 、 企業型DC加入者の IDeco加入の要件緩和など 、制度面 ・ 手続面の改善を図る 。
5その他
①国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
②未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加
③短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ具体の年数は政令で規定
④年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し
⑤児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し等
※参院厚生労働委員会は28日、パートなど短時間労働者への厚生年金の適用拡大を柱とする年金制度改革関連法案を、共産党を除く与野党の賛成多数で可決した。29日の本会議で可決、成立。
◆今回の改定の課題とは
(1)年金システムが、社会情勢とマッチングしづらくなっている
既述のとおり、高齢化社会が進む日本では、以前のように現役世代がリタイアした方々を背負うという年金システムが、社会情勢とマッチングしづらくなっているという状況があります。
従来の年金システムでは、現役世代の人口比率が高齢者世代よりも多いという前提があったからです。
(2)現役世代の負担を減らし、負担の偏りを解消しようという目的
今回の改正は、現役世代の負担を減らし、60歳以上の方であっても活躍できる方たちの力を活用し、負担の偏りを解消しようという大きな目的があります。
 様々な影響が必然おこる可能性も高く、むしろこの時期にまさに雇用不安や生活不安が増す中で、こうした年金法の改定を急ぐよりも、まずコロナ対策としても「マクロ経済スライド」方式を凍結し、「低年金の底上げ」こそが当面の支給額の安定化こそ急がれる方策であるとの意見も多く出されています。

政府が「第二次補正予算」を閣議決定
 第二次補正予算案の総額は事業規模で117兆円程度になる見通しです。いわゆる「真水」といわれる一般会計の歳出総額は、31.9兆円となる見通しです。
○対策の主な項目
◇感染患者などと向き合う医療や介護従事者などへ慰労金として最大20万円を支給します。一般の医療・介護労働者は、職種に関係なく5万円の支給か?
◇売り上げが一定程度落ち込んだ事業者を対象に原則、店舗の賃料の3分の2を半年分給付する制度を創設します。
◇雇用調整助成金の1日当たりの上限額を1万5000円に引き上げることにしています。
◇その他
・労働者自身が申請できる休業手当(最大33万円)
・企業に対する資本性資金の注入
・地方への臨時交付金(2兆円)
 ただ、実際にはアベノマスクにせよ様々な給付金制度等も手続きが煩雑で、緊急対応が困難案状況とが指摘されており、こうした施策が本当に実効性をもったものとなるのか等は全く不鮮明なところです。

全世代型社会保障検討会議の最終報告、年末に先送り
 政府は22日、全世代型社会保障検討会議(議長・安倍晋三首相)の第7回会合をテレビ会議方式で行った。首相は医療制度改革の詳細を盛り込んだ最終報告の策定を、当初予定していた6月から年末に延期すると表明した。7月に2回目の中間報告をまとめる考えも示した。新型コロナウイルスの感染拡大に対応した社会保障政策を盛り込む。

 社会保障改革をめぐっては、昨年12月に75歳以上の後期高齢者の医療機関での窓口負担について「一定所得以上は2割とし、それ以外は1割とする」と明記した中間報告をまとめた。年明け以降、2割負担となる人の所得基準について議論する予定だったが、感染拡大の影響で議論が中断し、先送りを余儀なくされた。

 政府は秋の臨時国会への関連法案提出を目指していたが、来年の通常国会にずれ込みそうだ

障連協が、学校再開に向け緊急要望

 大阪では、緊急事態宣言の解除と各事業ごとの感染拡大防止ガイドラインを配信し、その再開に向けた取り組みが進み始めています。
 ここでは、学校の再開がどのように行われるのか注目されてきましたが、文科省は、先だって学校再開のガイドラインを示し、『感染症対策のポイントは,「感染源を絶つこと」「感染経路を絶つこと」「抵抗力を高めること」』
としてその対応を求めるとして、『学校を再開する場合でも,放課後児童クラブ, 放課後等デイサービスにおいて密集性を回避し感染を防止する観点等からは,一定のスペースを確保することが必要である。
このため,教室,図書館,体育館,校庭等が利用可能である場合は,国庫補助を受けて整備した学校施設を使用する場合であっても財産処分には該当せず,手続は不要であり,積極的に学校施設の活用を推進すること。また,放課後等デイサービスについて,放課後等デイサービス事業所が学校施設を活用してサービスを提供した場合でも,当面の間,報酬を請求することを認めるので,教室,図書館,体育館,校庭等が利用可能である場合は,積極的に施設の活用を推進すること。なお,地域住民や様々な地域人材の参画を得て行う「放課後子供教室」の活用も可能であること。』
等を示しているが、特別支援学校については、「障害の状況等について十分配慮してうえで、個別の判断で再開」等とされています。
 こんな中で、大阪府では、別表のようなロードマップを公開し、再開に向けた準備を進めていくようです。
 なお、障連協では、現在府交渉の要望のとりまとめを行っていますが、緊急要望として、以下のような要望を行っていく予定となっています。
【緊急要望】
1.スクールバスを緊急に増車し、児童・生徒が安心・安全に通学できる環境を整備してください。
2.各校の実情に沿った感染防止策が講じられるよう手厚く支援するとともに、必要な資材(アルコール消毒液、フェイスシールドなど)を迅速に調達・配布してください。
3.新型コロナウイルス感染の第2波・第3波到来時には、知的・肢体不自由支援学校も他校と同様の分散登校などの措置を講じることができるよう、今から必要な手立てを講じて準備を行ってください。児童・生徒の「安全確保」を口実として、差別的に教育権を侵害することのないようにしてください。

 様々な意味で、現場からの発信が重要な時といえます。