大阪障害者センター 壁ニュース

名古屋生活保護訴訟に続き、東京優生保護訴訟でも不当判決!

「壁ニュース」テキスト版 2020/07/06

名古屋生活保護訴訟に続き、東京優生保護訴訟でも不当判決!
司法の判断にくじけることなく、今後の課題への対応を!

 6/30旧優生保護に関する訴訟で東京地裁は、「損害賠償を請求する権利はすでに消滅している」として訴えを退けました。
 裁判では、不法行為から20年が過ぎると賠償を求められなくなる「除斥期間」と呼ばれる期間を過ぎたかどうかが大きな争点となりました。30日の判決で、東京地方裁判所の伊藤正晴裁判長は、除斥期間について「手術は昭和32年に実施され、損害賠償を請求する権利はすでに消滅している。除斥期間の起算点を遅らせる余地があるとしても、優生保護法の問題点が社会的に理解される状況にあった昭和60年代か、どんなに遅くとも法律が廃止された平成8年までだ」として、男性側の訴えを退けました。
一方で、「旧優生保護法に基づく不妊手術は、憲法で保護された子どもを持つかどうか意思決定をする自由を侵害するものだ」としながらも、旧優生保護法自体の違憲性については明確な判断を示しませんでした。
 全国で起こされた9件の裁判で判決が言い渡されるのは、去年5月の仙台地裁に次いで2件目で、仙台地裁は、旧優生保護法が憲法違反だと認めていましたが、今回は違憲性について明確な判断を示さず、賠償も退けました。
 名古屋に続き、こうした一連の判決が出されたこととなりますが、こうした判決を受けて、全国弁護団からは以下のような声明が出されています。

【全国弁護団声明】
優生保護法訴訟東京地裁判決に対する声明

 本日、東京地方裁判所第14民事部は、原告の請求を棄却するとの判決を言い渡した。
 原告ら優生保護法被害者は、司法による被害回復がなされるものと信じて本日を迎えたが、その期待が大きく裏切られる結果となった。
 判決は、原告に対する審査手続きの違法を理由に損害賠償請求権を認めたものの、除斥期間の起算点を遅くても法改正のあった平成8年とし、20年を経過したことをもって国家賠償請求権が消滅したと断じた。さらに、特別立法の必要不可欠性は認められないとして、立法不作為についても国賠法上の違法は認められないと判断した。さらに、判決は、優生保護法の違憲性について何らの判断をしなかった。昨年5月28日の仙台地裁判決では、結論において原告らの請求を棄却したものの、憲法13条により個人の人格権(自己決定権)の一内容としてリプロダクティブライツが保障されることを明らかにし、優生保護法が憲法13条に違反することを認めており、東京地裁判決は、仙台地裁判決からも後退したものと評価せざるを得ない。
 昨年成立した優生保護法一時金支給法が被害回復には不十分であることを考えても、人権救済の最後の砦である司法府が被害回復を認めなければ、原告ら被害者の今後の被害回復は困難と言わざるを得ない。裁判所は、人権救済の最後の砦である司法の役割を放棄したに等しいものであり、誠に遺憾である。
 判決は、優生手術を受けた原告ら被害者の苦痛が人生にわたるものであり今なお続いていること、原告らに対する人権侵害行為を国が施策として行ってきたこと、国が優生保護法によって「不良な子孫」と認定したことが被害者とその家族を苦しめただけでなく、優生思想を生み出す原因となり、現在に至るまで障害者に対する差別を生み続けてきたことに真摯に向き合わないものであり、言語道断である。
 弁護団は、引き続き、優生保護法被害者の被害回復のために、そして優生思想を克服し、誰もが等しく個人として尊重される社会を目指し、全力で活動を継続することを決意し、ここに表明する。

 また、名古屋判決を受けて、いのちの砦裁判全国アクション共同代表/NPO法人日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は、以下のようなメッセージを寄せています。

【メッセージ】
遠のく憲法25条、でも私たちは!

「あじさいや 昨日の誠 今日の嘘」、これは正岡子規の句です。前日まで信じていた「勝利」でしたが、当日の結果は惨憺たるものでした。狐につままれるというのは、このようなことを指すのでしょう。「勝利を信じていた」は、決して読み違えや楽観論ではありません。あまりの非人間的な基準切り下げに、公正・中立を標榜する裁判所の修正機能を期待するのは、ごく当たり前の感覚ではないでしょうか。
 今回の判決を名付けるとするとどうなるでしょう。「国の代弁判決」「特定政党偏重判決」「憲法解釈基準引き下げ判決」……、最低最悪を表す言い方は尽きません。しかし、理不尽さや悔しさを嘆くだけでは、展望はひらけません。いま大事なことは、原告の訴えと、これを元にした私たちの主張の正しさに立ち返ることです。そして、正しさへの確信と怒りを運動のエネルギーに転化することです。控訴審や次の地裁判決に向けて、もっともっと大きな運動を創っていかなければなりません。
 名古屋地裁の原告と弁護団、支援者のみなさん、お疲れさまでした。私たちの運動に、「あきらめ」は似合いません。真の「いのちのとりで」をいっしょに造っていきましょう。  新型コロナの蔓延は、また少しずつ各地で再発生が続くなど、まったく予断を許しません。
 現在、国のレベルでは、再度緊急事態宣言などが出されるのか、また休業要請等が行われるのか定かではありませんが、こうした中で、一般の経済活動同様、障害福祉分野でも「就労系の事業所でも当然福祉事業としての影響だけでなく、仕事等の内容でも大きな影響が生まれています。
 今後、こうした動向に対し、福祉事業をどう維持していくのか、制度上の大きな対応が求まれれます。
 こうした状況下、政府は、今般の二次にわたる補正予算とともに来年度予算に関しても、
検討が進められていますが、そうした議論にも大きな注目が求められます。
 基本的動向は、第一に「経済財政諮問会議」での議論です。
 以下のその概要を紹介します。

【第9回経済財政諮問会議】
◇強靭かつ柔軟、安心できる社会保障の構築
と 包摂的な社会の実現 に向けて(6/22)
1.現状や課題を即時 把握し、 迅速・柔軟に対応する仕組みの構築
2.平時と危機に柔軟に対応できる医療提供体制の在り方
3.医療・介護におけるデジタル化の加速
4.予防・健康づくりの推進
5.介護の生産性向上に向けた取組の加速
?対面での介護サービスの提供が困難となり、認知症リスクの上昇や症状悪化が懸念される。介護予防サービス等でもリモートの活用を徹底して推進すべき。
?新型感染症の影響により介護分野の人材不足はさらに深刻化。今後4年間かけて実施する予定の介護文書の簡素化・標準化・ICT 化について、取組を早期に前倒しし、負担を抜本的に軽減すべき。
?クラウドを用いた介護事業所間でのケアプラン・実績の共有、介護事業所内のICT化について支援を拡充し、取組を加速すべき。また、ケアプランへのAI 活用を強力に推進するとともに、介護ロボット等の導入に資する人員配置の見直し等について、次期介護報酬改定で大胆に後押しすべき。
6.包摂的な社会の構築に向けた取組の強化
7.今次の経験の検証を踏まえた今後の取組
等の提案が行われているが、こうした方向が今後の検討方向として示されています。
※【新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題】(内閣官房全世代型社会保障検討室にも留意を
※こうした基本方針は、今後の報酬改定議論にも大きく反映されることとなります。

 なお、就労系の事業所については、第二次補正予算で以下のような事業が設定されていますが、こうした事業の活用など現場での対応も緊急に求められます。
◇新型コロナウイルスへの対応に伴う就労継続支援事業の取扱い等について(6/19)
※対象者については、在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した場合に対象として差し支えない(対応上の留意点に注意)

◇新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業( 障害福祉サービス等分)の実施について
(6/25)
※必要な物資を確保するとともに、感染症対策を徹底しつつ障害福祉サービス等を再開し、継続的に提供するための支援を行う。また、サービス利用休止中の利用者に対する利用再開に向けた働きかけや感染症防止のための環境整備の取組について支援を行う。さらに、新型コロナウイルスの感染防止対策を講じながら、障害福祉サービス等の継続に努めていただいた職員等に対して慰労金を支給する。

◇就労系障害福祉サービス等の機能強化事業(第二次補正予算)の実施について(6/30)
〇事業の目的
 本事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の影響を踏まえ、生産活動が停滞し減収となっている就労継続支援事業所に対し、その再起に向けて必要な費用を支援し、利用者の賃金・工賃の確保を図るとともに、在宅生活が長くなった障害者等の職場復帰・再就職に向け、障害者就業・生活支援センターの生活支援体制を強化することを目的とする。
(1)生産活動活性化支援事業
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の影響により、生産活動収入が相当程度減収している就労継続支援事業所に対し、その生産活動の再起に向けて必要となる費用を助成する。
※助成額
 助成額は、次の基準額と所定様式(別紙1)による事業所からの申請額とを比較して低い方の額の範囲内で実施主体が必要と認めた額とする。ただし、複数の事業所を運営する法人においては、1法人あたりの上限を200万円とする。
※対象となる費用
 助成の対象となる費用は、次に例示する費用など、生産活動の実施に必要な経費であって、その存続、再起に向けて、就労支援事業会計(「就労支援等の事業に関する会計処理の取扱いについて」の一部改正について別紙に示す会計処理のことをいう。)から支出すべき費用とする。
ア生産活動を存続させるために必要となる固定経費等の支出に要する費用
イ生産活動の再稼働等にかかる設備整備のメンテナンス等に要する費用
ウ通信販売、宅配、ホームページ制作等新たな販路拡大等に要する費用
エ新たな生産活動への転換等に要する費用
オ在庫調整等に要する費用や風評被害への対応等に係る広報活動に要する費用
カその他生産活動の再起に向けて必要と認められる費用
 こうしたものがどのような形で活用できるのか、ただ前年度収入比較等の実績が前提になるなど課題が残されています。
 また、厚労省は接触確認アプリのチラシ等も準備していますが、こうしたアプリの活用等も十分検討を行っていくことが求められます。

◇新型コロナウイルス接触確認アプリの周知について(6/24)
 本アプリは、利用者が新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性がある場合に通知を受けることができるものであり、感染の可能性をいち早く知ることができます。 それにより検査の受診など保健所のサポートを早く受けることや外出自粛など適切な行動を取ることができ、感染拡大の防止につながることが期待されます。なお、個人が特定される情報や、陽性者と接触者(接触の可能性があると通知を受けた者)との関係についての情報は一切記録されず、プライバシーは十分に保護されています。本アプリは利用者が増えることで感染防止の効果が高くなることが期待されます。催物等の開催時に本アプリの活用を呼びかけていただきますようお願いいたします。