大阪障害者センター 壁ニュース

新型コロナ大阪でもまた増加~こんな時期になぜ大阪市「特別区」の住民投票?~

「壁ニュース」テキスト版 2020/07/16

新型コロナ大阪でもまたぞろ感染者増加現象!
~こんな時期になぜ大阪市「特別区」の住民投票?~

 先の橋下氏が中心となって進めた「大阪都構想」。先の住民投票では、否決されたものですが、その後、大阪維新の会を中心に議論が継続され、 6月19日に開かれた「大阪府市大都市制度(特別区設置)協議会」(法定協議会)で、「大阪市廃止」のための「特別区設置・協定書」を維新・公明が多数の力で可決しました。維新は、府議会・大阪市議会にはかったうえで、11月1日に大阪市民の「住民投票」を強行する構えです。
 そこで改めて、こうした「特別区に関する住民投票」について考えてみましょう。
 その基本は、「大阪都構想」を理解することが大切です。

【大阪都構想とは】

 今回の提案の基礎となっているのは、「大阪都構想」です。
この提案について、従前からこうしたメリットやデメリットが指摘されてきました。
◇基本的考え方
大阪都構想の主な政策というのが
・大阪市を特別区に分ける
・権限と予算を大阪府に一本化する
上記の2点が挙げられます。
 現在の特別区に分けていない大阪市では大阪府と大阪市が権限を持っているので二極体制になっていると言えます。
この二重行政を解消することによって府と市が同じような事業をしていくことを解消することができるといいます。
 すでに、特別支援学校は、府立に統合されました。当初市立時代の様々な支援策(送迎保障や補助員体制)は、統合後、府立に合わせて特別施策は廃止されました。また、増設等の計画も、府の調整に移行され、特別な配慮は行われなくなっています。

【今回の提案は】

 大阪市を廃止し、大阪府直轄の4つの特別区にすることで、大阪市の予算・権限を吸い上げ、大阪府の財政を健全化することを目的としています。しかしこれを表向きに言うことはできません。大阪府の言い分は「府と市の二重行政の解消で税金の無駄使いを減らす」「より細かい行政サービスを実現する」というのが主張されてきました。

◇この提案は正しいのか
 当初は多額の財政効率化(4000億円)が図れるとしていましたが、大阪都構想を実現した際のプラスの効果は具体的にシミュレーションしにくいとされています。大阪市を解消したところで公務員は減るどころか、増える見込みとなっていますし、大規模な行政システムに変更に伴う多額の費用も発生する(1500億円)可能性が高いです。合わせて、住所変更手続き等住民自身や市内事業所にとっても様々な変更のための手続きや経費が掛かることとなります。また、お金以上に職員や市民に与える影響は少なからずあるでしょう。また、結果として行政の効率も上がるのか下がるのかが非常にわかりづらいものです。市民にとってのメリット・デメリットへの理解が十分に浸透していないのです。
※大阪市を廃止した後にできるのが「特別区」(区長公選・新たな議会設置・予算編成は可能・新規区役所の新設・公務員数の増加・区役所役割の増加・財源と権限が縮小)
・特別区になると大阪市の税収がいったん大阪府に吸い上げられることとなり、実質の区への配分は減ることとなります。(現8700億中2000億が大阪府へ)
※結果として、住民サービスの縮小が起こるとともに、大阪市民は二重の税金を支払うこととなります。
 こうした丁寧な説明や資料もなく、なんとなくムードで「改革」のみを押し付けたり、コロナ対策での知事期待を背景に強硬にこうした議論を押し付けることは決して許されません。
※その他の主張紹介
○都構想の内実を総括する-真実による後方支援:森 裕之(立命館大学)
○「都構想」を止めて大阪を豊かにする5つの方法 : 大石 あきこ (著)
○「大阪都構想」ハンドブック~「特別区設置協定書」を読み解く:大阪の自治を考える研究会:編著

 また今回の住民投票で、こうした大阪都の基本方向が承認され制度化されれば、現在近隣市町村は、その地域での住民投票なく、議会で承認されれば特別区として再編されることができるようになります。その意味では、今回のこの動向は、大阪府民全体の課題でもあり、大阪市民の問題として放置することのできない問題でもあるのです。

【今の大阪府・市の課題は何】
 
 今回の新型コロナ対策で、これまで進めてきた行政機構や医療・福祉政策の深刻な問題が急浮上しています。
 特に全国的にも大阪でも、行政効率の生産性向上や民間委託等の政策の中で何が起こっているのでしょうか。
 まず、行政機構では、これまで、大阪府や大阪市が保健所や公立病院等の廃止・縮小等を進めてきた結果、「公衆衛生部門」が十分な対応ができず、検査の問題やメンタルヘルスケアへの対応で人手不足から適切な対応を進めることができない実態が明らかになっています。医療についても結局公立病院がこうした対応の中核になることもできなくなっています。
 また、大阪市等では給付金支給等の遅滞が問題となっていますが、結局事務処理センター(民間委託)に集中する様々な手続き上の遅れが出ており、日常的にこうした業務の経験のない人手を投入してもその対応が困難となるなど極めて深刻な行政機能の低下が進んでいることでまともな対応を行うことができない状況となっています。
 また、特別支援教育でも三密防止・マスク・消毒の徹底等をうたっていますが、そもそも過密・過大の支援学校や学級の実態の中でなかなか対応が難しい問題や、送迎時の三密防止策も十分講じられない中で、どのようにきょいく環境整備を行っていくのかなども大きな課題となっています。
 また現在第5次障害者計画等が検討されていますが、大阪市としての計画が、この分割案でどのように継承されるのか、特に現象でも区間の障害サービス機能の格差が指摘されており、このまま分割されれば、実際に大阪市として整備等を進めてきた福祉計画相のものも大きく様変わりしてします状況についても十分な検討が進められているとは言えない中、どの区に住むかでサービス提供の格差が広がることは目に見えています。
 さらに現状での大阪市としての行政専門職の配置が、分割された後適正に配置され、適切な行政機能を発揮できるのか、現在でも区によってその対応の違いがあり、市の本局が調整をする等の機能が損なわれれば、さらに格差が拡大していくことも予想され、単純に身近なサービス提供が小さくすれば適切に発揮できるとは到底考えられません。この点でも市民に対し一般論ではなく、より適切な情報提供が必要といえます。
 またこうした中で、分割等の議論が並行する中、障害者児に対する緊急支援施策や大規模災害対策等についても先が見えず、具体的な対応を検討することすらできない状況が進んでいます。
 いま行うべきことは、まずこうした問題点を明らかにし、大阪府として大阪市として住民の生命と安全安心を守る基本的な自治体機能をどう再構築するかを真剣に考え適切な施策やその実施にあたっての体制整備を進めることが最重要課題といえます。

【今できることは何か】
 こうした緊急の課題がある中でも、なぜこの住民投票を急ぐのか、府民連等では、以下のような指摘をしています。
 第1に、「特別区」から権限・財源は「府」に奪われ、いまの「18歳までの医療費助成」をはじめ、住民サービスは「向上」どころか、「維持」さえ保障はありません。
 第2に、「特別区」の庁舎や職員は巨大な「中之島合同庁舎」――よその自治体にまたがるという、日本では「離島」にしかなく、自治体の体をなさない姿です。
 第3に、基礎自治体のもっとも大きな仕事である「介護保険」の事務など多くが「特別区」ではなく、巨大な「一部事務組合」が担う設計です。「府」「特別区」「一部事務組合」という複雑な「三重行政」で、住民の声が届かないしくみです。
 第4に、政府の地方制度調査会でも「茨の道」といわれたとおり、「特別区」は財源なき「財政調整」に制約され、結局は「府」のいうままになります。
 第5に、「住民サービスは基礎自治体」「成長戦略は府で」の名のもとで、「大阪府」が「住民福祉向上」や「基礎自治体の補完」機能を切り捨て、ひたすらカジノや「湾岸開発」にひた走るなど変質をもたらします。
 また今回の新型コロナ対策で、これまで進めてきた

(「住民投票」よりコロナ対策)
 同時に、市のパブリックコメントに寄せられた声にみられるとおり、いま市民の批判が集中しているのは、政治的立場をこえてコロナ対策に総力をあげなければならないときに、「大阪市廃止」という政争と市民を分断する課題をなぜ持ち込むのかという点です。しかも、いまの「協定書」の根拠とされる「財政シミュレーション」は「コロナ以前」のものであり、市民や中小業者、医療機関などがかかえる苦難やこれからの「第2波」にそなえることが想定にありません。

 新型コロナ問題は、これまで削減し続けてきた保健所や病院、公衆衛生研究所などの機能と体制を一刻も早く立て直すこと、「インバウンド頼み」ではなく、庶民と中小業者のふところを温めることを軸にした大阪経済政策の転換、「少人数学級」を子どもたちにプレゼントし、どの子も生き生きと成長する教育の実現、これらをささえる「公」の役割と機能の抜本的強化など、これまでの大阪の政治・経済・社会の在り方を根本から見直すことを求めています。

今なぜ「住民投票」の強行をするのか?~コロナ禍のもとでの「大阪市廃止」は許されない。

 明るい民主大阪府政をつくる会・大阪市をよくする会は、「急ぐべきは新型コロナ対策、大阪市廃止のための住民投票中止を呼びかけよう!」との声明を出し陳情署名を呼びかけています。
 障連協でも、引き続き、大阪市への緊急要望を取りまとめるとともに、障害者児への影響等を踏まえた討議パンフの作成を行いながら、こうした問題を主体的に検討できる資料を作成するとともに、当面こうした団体署名等への協力を呼びかけています。
※団体署名・陳情署名等は、事務局までお問い合わせください。