大阪障害者センター 壁ニュース

「大阪都構想」 障害者団体がこの問題を考えるリーフレットを配信!

「壁ニュース」テキスト版 2020/08/21

「大阪都構想」とは、障害者団体が
この問題を考えるリーフレットを配信!

 前豪でも紹介しましたが、「大阪都構想」やこれに係る「住民投票」等について、しっかりと中身を検討しようと、障連協・きょうされん大阪支部が共同で「大阪市ホントになくしてしまっていいの?」リーフレットを発刊しました。

【リフレット概要】
◇大阪市ホントになくしてしまっていいの?
 いま一度冷静な目で「大阪都」構想を問い返してみませんか。
このリーフレットは、障害者・家族・関係者が大阪市の解体でどのような影響受けるのかについて、ご一緒に考えるために作成しました。
○大阪市廃止でどうなる?
 これまで24区がつみ上げてきた住民自治が大阪市廃止で断ち切れに?
 大阪市は、障がい者の地域における生活を支援し、自立と社会参加を促進するため各区に地区自立支援協議会を設置し、相談支援事業や障害者福祉に関した様々な協議を行ってきました。区によっては、自立支援協議会を中心に事業所間のつながりや、地域の社会資源マップ作り、福祉避難所に指定された事業所間の連携など、地域の実情に応じた取り組みをすすめてきました。同様に24区ごとに様々な場面で住民自治を積み上げてきた歴史があります。特別区の設置でこれまでの積み上げはどうなるのでしょうか?この点について大阪市は、「詳細な制度設計はこれから」としか回答しません。
●当事者参加で議論を積み上げてきた、主な障害関連機関
 障害者総合福祉法に基づくサービスの整備目標等を定める「障害福祉計画」、障害児者の地域生活の課題などを協議し解決していく「障害者自立支援協議会」、避難行動要援護者などへの支援の在り方を検討する「防災会議」などで議論を進めてきました。
●区民の声を、しっかりと受けとめるには程遠い議員定数
 4つの特別区に設置される「区議会」。議員数はもともと政令市の中で市民一人当たりの議員数が、3番目に少ない大阪市議会議員の定数を4つにわけたものとなります。そのため人口が同規模の都市と比べて議員数は圧倒的に不足します。人口64万人の船橋市は定数50 ですが、人口65万人の天王寺区は19人。人口69万人の静岡市は定数68ですが、人口70万人の中央区は23人。これでは議会での審議や区政の監視機能など、区議会が果たさなければならない役割が大きく制約されてしまいます。
※まだまだわからないことだらけ だから…
このままでの見切り発車にストップをかけましょう
●介護保険と障害者施策・柔軟な対応が困難に
●様々な住民向けサービス・財源難で継続が困難に
●無料乗車証やグループホームはどうなる?
●府下市町村にも大きな影響が
 大阪市の解体は府下にも大きな影響を与えます。
 大阪府の行政機能が開発や成長戦略に集中することから、住民福祉の拡充と市町村との協力がおきざりにされてしまいます。また、特別区設置後は近接する自治体は住民投票をしなくても、議会の決議だけで特別区に編入
されてしまいます。大阪市の解体・特別区の設置は全府民が直面する重大事でもあります。
●コロナ禍の中 なぜ急ぐ住民投票
 多くの市民が疑問に思うのは、このコロナ禍の中でなぜそんなにまでして住民投票を急ぐのかということです。保健所も医療機関や福祉事業者も様々な困難を抱えながら、現場を必死で支えています。 行政として真っ先に行わなければならないことは、そんな現場への支援とあわせ、PCR検査体制を抜本的に広げていくことではないでしょうか。市民が冷静に判断するゆとりを奪われている間をぬって、住民投票をごり押しするやり方は許せません。
※障害福祉・障害児福祉の現場で何が起こっている?

※詳細のリーフレットは、障連協・きょうされん大阪支部にお問い合わせください。
 また、各団体のホームページにもアップされます。
 新型コロナの蔓延は、日増しに急増するなど、その不安は全国民的に広がってきています。
 こうした状況下、結局、国や自治体の政策は、まちまちで今後の対策等も不十分なうえ、「マスク」に続いて不用意な知事の発言で「うがい薬」の買い占め騒ぎまで引き起こされ、「マスク警察」など、国民間の様々なバッシング騒ぎなどが引き起こされています。
 今後、さらに適切な具体的対応策の提案が急がれますが、こうした中、国際的蔓延下、WHO・国連は相次いで「障害児者への特別な施策」の重要性を配信しています。
 当該文章をJDの佐藤久夫先生が仮訳されたものが紹介されています。

【WHO COVIDー19急増下での障害への配慮】(2020年3月26日)
COVIDー19の急増時に、なぜ障害のある人に追加の配慮が必要なのでしょうか?
 障害のある人は、以下の理由から新型コロナに感染するリスクが高くなる可能性があります。
また、基礎となる健康状態によりますが、障害のある人が感染すると、より重症化するリスクが高くなります。 また障害のある人は、頼っているサービスの深刻な中断により、感染急増の影響を極端に強く受ける可能性があります。
○障害のある人とその家族の取り組み
・あなたが新型コロナに触れる可能性を減らす
・必要な介護や支援を継続して受けられるよう計画を立てる
・新型コロナに感染した場合に備えて、家庭の準備をする
・家族員と介護者の精神的・身体的健康
○政府の取り組み
・公衆衛生情報とコミュニケーションをアクセスしやすいようにする
・障害のある人とその支援ネットワークを対象とした措置に取り組む
・障害サービス提供者を対象とした措置の実施
○医療従事者の取り組み
・医療がアクセスしやすく、手頃な価格で、インクルーシブであることを保証する
・障害のある人のためのテレ医療の提供
○障害サービス事業者の取り組み
・サービス継続計画の策定と実施
・障害のある人およびその支援ネットワークと頻繁にコミュニケーションをとる
・障害サービスの提供中の COVID-19 への曝露の可能性を減らす
・複雑なニーズを持つ障害のある人に十分な支援を提供する
○地域社会の取り組み
・一般市民が採用すべき基本的な保護措置
・雇用主が支援すべき柔軟な勤務体制と感染予防
・店舗所有者による、脆弱な人々の店舗へのアクセスの改善
・障害のある人のために家族、友人、近所の人が提供すべき追加サポート

【新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)に対する障害インクルーシブな対応】(国連 2020年5月)
1.要約
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的危機は、既存の不平等を深め、排除の広がりを明るみに出し、障害インクルージョン(disability inclusion 訳注:障害者の包摂とも訳せる)への取り組みが不可欠であることを浮き彫りにしている。10億人の障害のある人は、私たちの社会で最も排除されたグループの一つであり、死亡率の面でこの危機で最も大きな打撃を受けている一員である。
2.COVID-19 は障害のある人にどう影響するか
 障害のある人は、COVID19の流行によって特に大きな影響を受けている。60歳以上の高齢者の48%は障害のある人と推定される 。女性の5人に1人が生涯に障害を経験する可能性が高く、10人の子どものうちの1人に障害がある 。障害のある10億人のうち、80%が発展途上国に住んでいる 。
3.障害インクルーシブなCOVID-19への対応と復興のための基盤
 障害のある人が取り残されないようにするためには、障害に対する人権に基づくアプローチが必要である 。CRPDと2030アジェンダの両方とも、計画と実施の主体として、障害のある人をすべての努力の中心に据えることを求めている。
4.障害インクルーシブな COVID-19 への対応と復興の分野別行動と提言
○医療
・公衆衛生情報へのアクセスを確保する。
・COVID-19に対する防護措置を実施する。
サービスへのアクセスを確保する。
・乏しい医療資源の配分において、非差別を確保する。
・精神保健への介入を障害インクルーシブにする。
○施設内の人々の保護
・起こり得る感染を予防し、感染に対応できるように施設を準備する。
・施設内の人数を減らす。
・刑務所での障害のある人の数を減らす。
○支援サービス
・支援サービスの継続性を確保する。
・障害のある人のための地域社会支援を拡大する。
○社会的保障と雇用
・一般の社会的保障と障害のある人を対象とした社会的保障を拡大し、障害のある人とその家族に適切な救済と支援を提供するために、給付の仕組み改善する。
・雇用と労働条件は、アクセシビリティとインクルージョンに対応したものでなければならない。
・新しい働き方や条件を、アクセシブルでインクルーシブにする。
・障害インクルーシブな労働安全衛生(OSH)対策を確実に行う。
・ロックダウンの解除へのアプローチは、障害のある人の特定の状況を考慮する必要がある。
○教育
・オンライン教育を障害のある学生がアクセスしやすく、インクルーシブなものにする。
・学習以外への影響に取り組む。
・学校復帰事業をインクルーシブなものにする。
○暴力の予防と対応
・インクルーシブでアクセスしやすい被害者支援サービスを確保する。
・意識の向上と知識の強化。
○人道の分野
・障害インクルーシブな人道支援と災害対応を確保する。
5.SDGSの実現-より良い復興
 COVID-19 危機の間およびその後に私たちが行うすべてのことは、大流行やその他多くの世界的な課題に直面しても跳ね返すことができる、より平等で、インクルーシブで、持続可能な経済と社会を構築することに強く焦点を当てなければならない。
①対応のすべての段階において、障害のある人を有意義に関与させる。
②社会経済的対応において障害のある人を優先する。
③国の対応と復興計画において、障害のある人のインクルージョンとエンパワーメントを追跡する。
④障害のある人の健康成果(水準)を改善する。
⑤持続可能で障害インクルーシブな社会的保障制度を構築する。
⑥すべての部門で障害を持つ労働者の特殊な状況に対処する。
⑦地域に根ざした解決策に今すぐ投資する。
⑧多様な関係者の対話と協力を開始する。
6.まとめ
 COVID-19は、前例のない規模の人類の危機を生み出し、10億人の障害のある人に特に大きな影響を与えている。これは、前例のない対応、すなわち、支援の並々ならぬ拡充と政治的決意を必要としており、障害のある人が危機を乗り切るために、緊急の医療と社会的保障サービスを含む、必要不可欠なサービスへのアクセスを確保することが必要である。
 障害インクルーシブなCOVID-19 の対応と復興は、すべての人により良いサービスを提供することになる。それは、複雑な状況に対応できる、より包括的で、アクセスしやすく、機敏なシステムを提供し、最も遅れている人に先に手を差し伸べることができるようになる。それは、すべての人にとってより良い未来への道を開くことになる。

 こうした緊急提言は、特に国連においては、「障害者権利条約」との関係も含め、施策上、非差別・交差性・アクセシビリティ・参加・説明責任を明確にした施策の展開を強く呼びかけているが、今回の事態に当たって、こうした視点が国や自治体の中でどのように位置づけられているか、まさに障害者権利条約に基づく施策展開の第一歩として、広く行政機構等に羽田礫かけていく必要が緊急にあるといえます。
 もちろん、現在、行政等は、こうした文章の紹介すらなく、対策も後回しとされたり、今後医療崩壊時等で起こりかねない生命の選択(トリアージュ)等の議論にも影響するだけに早期にこうした対策の必要性を流布していく必要がありそうです。